◇回顧2014◇ 上越タウンジャーナル記者トーク(下)

今年1年を振り返る記者トークの前日からの続きです。(記事中で色の変わった文字をクリックすると、その記事が別ウインドウで開きます)

江口 2日目は北陸新幹線やスポーツ以外で印象的なニュースを取り上げたい。今年も事件や事故が多かった一年だが……。

川村 今年はなんといっても、5月4日にあった柿崎区上下浜の海岸で親子など5人が波に飲まれて亡くなった事故。発生から1時間半後ぐらいに現場に到着したら、まだ救助活動をやっていた。消防隊員がロープに体をくくりつけて、海に飛び込むことを繰り返していたし、海上からはヘリが3機も飛んで捜索していた。海岸で泣き崩れている女性がいて、現場でカメラを向けるのが心苦しかった。

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江口 いずれも長野県の人で、子供を波打ち際で遊ばせておいたところ、高波にさらわれてしまった。そして助けに向かった親や釣り人も巻き込まれた。

川村 地元の人は海の怖さを知っているが、県外の人に周知するのは難しい。

江口 個人的な経験だが、この夏、海でボディーボードで遊んでいたら小学校低学年くらいの子供が溺れかけていて、ボードに引き上げ浜辺まで連れて行った。親は長野県の若いグループだったが、子供がおぼれた後も一向に気を付ける様子がないのには驚いた。同じグループの幼児が浅瀬で「ママー」と呼んでも、「はい、はい」と返事をするだけで見向きもしない。これは公園で小さな子供を遊ばせているのと同じ感覚。地元の人には考えられない感覚だが、海に遊びに来る人の事故を防ぐには、こういった初歩的なことの啓発が大事だと改めて実感した。

川村 柿崎の事故の前の5月3日には直江津港で釣り人が戻れなくなりヘリに救助されたり、6月5日には大潟沖でミニボートが転覆した。8月6日にはたにはま海水浴場で66歳の男性が亡くなる事故もあった。いずれにしろ、看板を立てるぐらいでは効果はあまり期待できない。規制を強化したり、パトロールするしかないの現状だ。

江口 次は雪国の宿命だが、雪の事故が毎年のように起きる。

川村 1月21日に吉川区でロータリー除雪車に男性作業員が巻き込まれて亡くなった事故は悲惨だった。3月12日にも妙高市で作業員がロータリー除雪車に足を巻き込まれる事故があり、12月23日には板倉区で除雪中の男性が巻き込まれて死亡した。「ウルヴァリン」という映画でロータリー除雪車を兵器に使う場面が出てくるが、それほど危険な機械だということを肝に銘じないといけない。

江口 雪下ろしの転落事故も毎年多いが、行政などは腰にロープを付けることや2人以上でやるなど、さまざまな呼び掛けをしているが、良い方法はないものだろうか。

川村 雪下ろしにスノーダンプを使うようになってから事故が多い気がする。昔はスコップだけでやっていたが、スノーダンプは、大きく重いので、その分危険性が高い。その上、高床式住宅が増えたことや、車社会になって家の周りを除雪するようになり、雪ではなくコンクリートの上に落ちるので、大怪我になる。

川村 次はビジネス関連。大手チェーンが進出し、地元の老舗や小規模店が閉店するという傾向がずっと続いている。昨年はゴーゴーカレー、コメダ珈琲が進出したが、今年は7月1日ワールドビュッフェ5月26日にスターバックスコーヒー5月3日に大戸屋が進出した。

江口 地元店の閉店では「日曜大工まつもと」駄菓子屋の「清水商店」酒造業の「谷之井酒造」。値段では大手に勝てないからね。かといって高級路線に転換するのは難しい。利益をけずって営業し、それが体力をどんどん奪っていく。さらには後継者難が拍車をかける。

川村 全国でただ一つ店舗がなかった鳥取県にも、スタバは来年出店するとか。鳥取県知事は「鳥取にスタバはないがスナバ(砂場)はある」と言ったが、それも終わりだ。上越もスタバができたことで、都会の仲間入りしたという感じが市民の中にあったようで、オープン初日には行列もできた。スタバのイメージ戦略に乗せられた感じだが、今は地方都市にどんどんスタバができているしね。オープン初日に村山上越市長がテープカットしたのは、かなり笑えた。上越は田舎だということをピーアールしたようなものだ。

江口 市長がテープカットしたのは市の土地を提供したからということだけど…。まあ、そんな事情はなかなか分からないものね。地元店はチェーン店などの影響で、どこも苦戦しているが、頑張っている店もある。

川村 上越で頑張っている筆頭は「富寿し」だろうね。シンガポールなど海外進出も順調だし、日本の「おもてなし」の心を伝えているのが素晴らしい。あとは、妙高市の制服ブランドの「このみ」くらいか。

江口 本町5の再開発ビル「あすとぴあ高田」はなかなかうまくいかない。今年4月にダーウィンズという会社が2階にテナントとして入居すると虚偽の発表をした。この件については同社は何の説明もしていない状態が続いているが、結局2階はオープン以来今まで決まらず空いたままだ。さらに11月には1階の生鮮スーパー「旬菜市場はるか」が売上不振のため閉店した。

川村 多額の税金がつぎ込まれた施設だけに、今後も注視していきたい。

江口 新幹線が来て、首都圏や関西圏、アジアの人たちが上越に来て見たいと思うものってなんだろう。

川村 軸になるのが「高田城百万人観桜会」だろうね。うまくやれば200万人ぐらいまで可能だと思う。今年131万人も来たのには、吉永小百合さんが映っているJR東日本のポスターが効果的だった言われている。妙高市の君の井酒造でも撮影しているしね。

江口 高田城百万人観桜会謙信公祭のガクト謙信越後謙信SAKEまつり。この3つはもう少しブラッシュアップすれば首都圏やアジアの人たちが、わざわざ上越に来て見ても満足できる魅力的なイベントだと思う。これらを強化しつつ、新しいものを打ち出していかなくては。

川村 雪を売り出す方法も考えなくてはいけない。「灯の回廊」はいいと思うが、観光客を周遊させる方法を考えないと。市街地にあえて除雪をしない地域を作るなど、もう少し知恵を集結しないとだめかな。

江口 高田地区の一斉雪下ろしや、ダンプとロータリー除雪車、パワーショベルの見事なコンビネーションの排雪作業なども観光化できれば面白いと思うんだけどなあ。

川村 厚生産業会館についても、建設費高騰ネット署名とフェイスブックでの運動住民監査請求などさまざまな動きがあったね。

江口 いずれにしても、来年の市議会3月定例会には本体工事の予算が提案されることになるので、そこで議会が認めるのか、それぞれの議員がどういう態度を取るのかということになる。市長も議員も市民に説明を尽くした上で、決めていってほしいと思う。

川村 あと、ガス水道局をめぐる談合疑惑。市の調査委員会が「談合の存在を疑う発言がある」として公正取引委員会に通知したのに、公取委は一向に動く気配はないね。このままうやむやになるのかな。

江口 この問題を最初に取り上げたのは日本共産党上越市議会議員団で、最終的には住民訴訟に持ち込むと期待している。まだ訴訟の前提条件となる住民監査請求をしていないが、今後の動きに期待したい。

川村 今年の上越タウンジャーナルの新たな取り組みとしては、360度ぐるぐる動かして見ることができる全天球写真を導入した。

江口 高田城百万人観桜会やはすまつり、新幹線駅舎、いもり池の水芭蕉などを撮影してみたが、ぐるぐる動かせるのは面白い。来年はドローン導入も考えてみたい。

川村 無人の小型飛行機ドローンは、結構普及してきたね。地方紙でも今年導入したところがあった。念願の空撮が自前でできるのは魅力だが、導入は価格と性能のバランス次第だね。

(終わり)

◇回顧2014◇ 上越タウンジャーナル記者トーク(上)
https://www.joetsutj.com/articles/52112696

*ガス水道局をめぐる談合疑惑についての発言の一部に事実誤認があったので文言を若干修正しました(2015年1月11日)