新潟県上越市は2025年に第100回を迎える謙信公祭で上杉謙信が愛用していた刀で国宝の「太刀無銘一文字(号 山鳥毛)」を展示しようと2024年9月12日、小田基史副市長らが刀を所有する岡山県瀬戸内市の武久顕也市長を訪ね、借用を依頼した。武久市長は「ぜひ上越市の皆様にもご覧いただきたい」と応えた。
備前刀の最高峰とも言われる山鳥毛は、謙信、景勝の愛刀として上杉家に伝えられてきた。祭りを主催する謙信公祭協賛会は100回の節目を記念し、謙信ゆかりの宝を故郷の上越市内で展示しようと、市と連携して進めている。
この日は小田副市長と謙信公祭実行委員会の青柳伸一実行委員長らが瀬戸内市役所を訪れ、武久市長と面会し中川幹太上越市長らの親書を手渡した。小田副市長は「謙信公祭が第100回を迎え、2028年には没後450年、2030年には生誕500年という機会もあり、そこに向かって一生懸命やっていきたい。愛用された刀を(謙信の)魂として迎えられれば」と求めた。
山鳥毛は岡山県の個人が所有していた2016年、上越市が購入に向け寄付金を募るなどしながら所有者と交渉していたが、購入金額が折り合わず2017年に断念した。その後、備前刀の刀工集団、福岡一文字派が拠点としていた瀬戸内市が所有者から打診を受けて5億円で購入し、2020年3月から所有している。武久市長は購入費を募るクラウドファンディングを開始する際の記者会見で、上越市での展示の可能性について示唆していた。
購入に際して上越市を訪れたという武久市長は「お話を聞かせていただいたり、励ましていただいたりした思い出がよみがえる。無念な思いをなさったにもかかわらず、プロジェクトを応援してくださったというご恩に報いたい」と話した。
一方で国宝の展示には文化庁の許可が必要となり、今後運搬体制や展示環境など協議し、年内をめどに借用の可否を決める。武久市長は「課題を一つ一つ乗り越えていけるように努力したい」と述べた。上越市では展示は市立歴史博物館で、謙信公祭に重なる期間を想定している。
面会後には備前長船刀剣博物館も訪れ、瀬戸内市誕生20周年を記念し特別展示中の山鳥毛を見学した。小田副市長は「刃文や実際に使われていた証の刃こぼれは他にないもの。ぜひ市民にも見てもらう機会を設けたい」と語った。