新潟県上越市が購入を予定している上杉謙信の愛刀で国宝の「太刀無銘一文字(号 山鳥毛)」をめぐり、所有者との間で契約金額に折り合いがつかず交渉が難航している問題について、上越市教育委員会は2017年9月11日、市議会文教経済委員会で「想定外の事態」と説明し、今後も引き続き当初予算額で購入に向けた交渉を続ける考えを明らかにした。
市教委は、本年度の当初予算提案に先立ち、太刀について専門家3人による鑑定を行いその評価額がいずれも3億2000万円だったことを所有者に伝えたと説明。所有者は文化財保護法に従い、評価額を予定対価として記した売渡申出書を文化庁に提出しているという。こうした手順を踏んで当初予算に3億2000万円を購入費として計上し、議会の議決を経て所有者と交渉してきたが、現状では契約金額が折り合わない状態にあるという。
委員会では議員から「現状は当初から織り込み済みの事態か」「金額で折り合いがつかないのなら4億、5億と上がっていくのか」「市民の寄付も募っている中でもし購入できなかったら市民にどう説明するのか」などの質問が出た。
野澤朗教育長は、手順を踏んできたことを説明した上で「今の事態は想定外の事態」と答弁。また「交渉中ということを承知してほしい。方向性としては3億2000万円で交渉を続ける」と説明した。
山鳥毛は岡山県の個人所有で現在、岡山県立博物館に寄託されている。2015月6月に新潟県立歴史博物館を通じて、所有者が謙信ゆかりの地に太刀を譲渡する意向があるいう情報が寄せられ、交渉を続けている。同市では購入に向けて昨年10月から官民一体となって募金活動も実施している。
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