新潟県上越市が購入の方針を示している上杉謙信の愛刀で国宝の「太刀無銘一文字(号 山鳥毛)」をテーマに市民有志が企画した「山鳥毛フォーラム」が2017年2月26日、土橋の市民プラザで開かれた。太刀購入に税金を使うことについて考えるフォーラムに約100人が集まった。
100人超える参加者
パネリストは公募で、40〜70代の6人。購入賛成側が謙信公「義の心」の会の石田明義会長、同会の義の心大使の佐藤真司さん、会社社長の永野富士夫さんの3人。反対側は、会社員の宮澤隆さん、河野健一さん、横山郁代さん。上越志民会議の中村真二代表がアンカーを務めた。村山秀幸上越市長も出席し、3時間にわたるやり取りを聞いた。
参加者について、主催者では、最大で80人程度を予想していたが、100人以上が訪れ、急きょ席を追加した。市議会議員や行政関係者も参加した。
「異なる意見尊重する場に」
冒頭、実行委員会長の今井孝さんが「意見の異なる人が同じ場所に集まって、後腐れなく話し合うこと。これができれが何かが変わると思う」と話し、二分された意見のぶつかり合いではなく、相手の意見を尊重しあえる場にしようというフォーラムの主旨を説明した。
村山市長も「賛成、反対、議会、行政などの垣根を越えた場を設けてもらい感謝している。こうしたフォーラムは対話であり、相手の思いを理解し、自分の意見についても考える場。民意をまとめていくにはこういうことが大事だ」と話した。
意見表明と議論
続いて、パネリストがそれぞれ、賛否の意見を表明した。
賛成の佐藤さんが「上越市民が協力して次の時代に何を残すかを考えてほしい」と訴えたほか、石田さんは山鳥毛取得を契機にした観光の基幹産業化、教育、人口減少対策など広くまちづくり全般について提言した。
反対側は「山鳥毛があればいいと思うが、財政状況が厳しい中、税金を使うのには反対」(河野さん)、「文化的な価値はあると思うが、購入の過程に市民が納得するか疑問」(横山さん)などと話した。
その後のやりとりでは、パネリスト同士が互いに疑問点などを質問しあった。
石田さんが「上越市は小林古径の絵を5億円近い税金で買っているが、古径は良くて山鳥毛はだめな論拠を示してほしい」と反対側に求めると、宮澤さんが「市がそうしたものを買ったというのは今初めて聞いたが、今回は(山鳥毛購入が)市民の中で問題になり、知ることができたのでこうしたフォーラムになった」と答えた。アンカーの中村さんはこのやりとりを受けて「賛成側と反対側は敵同士なのではなく、最大の敵は実は無関心」とまとめた。石田さんは「確かに情報不足はある。最終的には市議会で議員が税の使い方を決めることになる。議員と膝を交えて情報交換していくのも一つの道」と話した。
パネリストで最高齢の佐藤さんは「寄付すれば、(山鳥毛の)鼻先数センチ分でも自分が寄付した分だという気持になる。若い人はどうしたらいいか分からないかもしれないし、老人の間でも刀に3億出すなら風呂の券をただにしろという声もあるが、そうじゃない。少ない金額でも寄付したら、誇りになる」と力説した。
後半は来場者から募った意見にパネリストが答えた。
「反対の人はどうしたら賛成するのか」「義の心とはどういった意味か」「税金を使うべきではないというのは、1銭たりともだめという意味か」などさまざまな意見に、パネリストが自由に答えていた。
会場でアンケート実施
最後は参加者にアンケートを実施した。アンケートは4択で、結果は次のようになった。
- 募金・寄付金の額にかかわらず全額税金のみで購入すべき(全額税金)… 9票
- 募金・寄付金は集めるが税金で購入しても構わない(一部税金)…………46票
- 募金・寄付金でのみで購入するなら購入しても構わない(寄付金のみ)…23票
- 山鳥毛の購入は一切不要だ(一切不要)………………………………………10票
総数88票に対して、「全額税金」と「一部税金」を合わせた税金での購入を認める割合は約63%。税金での購入反対37%となった。
3月1日からの市議会へ
山鳥毛の購入費用3億3079万円を計上した上越市の新年度予算案は3月1日から始まる市議会3月定例会で審議される。実行委員会では、会場でのアンケート結果とフォーラムを詳細な記録を市議会に提出するとしている。
議事録を公開
主催者では2017年3月13日、フォーラムの詳細な議事録(http://joetsu-kakumei.net/submit-sanchomo-forum-minutes)を公開した。