◇回顧2013◇ 上越タウンジャーナル記者トーク(2)

 2回目は、市民の間で論議を呼んだ出来事を取り上げてみたい。ネットメディアは双方向性があるので、さまざまな意見が自由に飛び交う。リアル社会とは違うネット社会の現実に戸惑いながらも、試行錯誤しながらニュースを組み立ててきた。記事にはならなかった裏話も交えて、トークを進めた。

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イレブンプラザがオープン(3月28日)
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【高田地区中心市街地活性化】

川村 今年もいろいろ市民の間で論議を呼んだ出来事があったので、1年を振り返ってみたい。まずは、高田地区中心市街地活性化の関連。大和上越店跡のイレブンプラザが3月28日にオープンし、長崎屋跡のあすとぴあ高田が4月12日にオープンした。活性化基本計画のコンセプトとなる「2核1モール」が完成したわけだが、いまだ空きテナントがあり、客足が戻るまでに至らなかった。

江口 50億円近くの金を投入して、当初の目標が達成できなったというのには、正直言って衝撃を受けた。このことが報告された市議会では、商店街自身の努力が足りないと見る向きも多かった。そう言われても仕方ないのかもしれない。

川村 イレブンプラザのドラッグストアは深夜0時までの営業時間を目玉にスタートしたが、秋には午後10時までに短縮した。午後6時を過ぎると本町通りはほとんど人通りがなくなる。これは想定外だったということか。それでも毎週日曜に本町アイドルのがんぎっこのステージをやったり、各種イベントを積極的に繰り広げたおかげで、若い人が本町に集まってきたイメージがある。だが、イレブンプラザ内に集まるだけで、商店街全体への波及効果は少なかった。

江口 がんぎっこが頑張っているだけに残念。

川村 あすとぴあ高田は2階のテナントが決まらないこともあり、集客力が足りない印象。旧ビルにあった「雁木通り美術館」は1500平方mあったのに、現在のギャラリーは300平方mしかなく、大きな展覧会が開けないのが苦しい。女性や高齢者が苦手な立体駐車場もネックになっている。

江口 今回、国の認定を受けて事業を実施したわけだが、こんな結果を見ると「中心市街地」ということについて根本的なことを考えてしまう。「市街地」といっても中山間地並みに過疎化は進んでいるし、そもそも「中心」なんだろうかと。なぜ活性化させる必要があるのかと。よく分からなくなってくる。

陸上自衛隊高田駐屯地の観桜会市中パレード(4月20日)
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【自衛隊】

川村 市民意識の変化を感じた出来事が、自衛隊に関する出来事かな。まずは、4月20日に行われた高田城百万人観桜会で、41年ぶりに行われた陸上自衛隊高田駐屯地の隊員や装甲車による市中パレード。「銃を携行しての武装行動は威圧感を与える」として、上越地域の労働組合などから市に抗議文が提出された。ツイッターの反応ではパレードに好意的な意見がほとんどだった。阪神淡路大震災、中越地震、中越沖地震、東日本大震災などの救助活動、復旧活動などで自衛隊に対する印象がずいぶん変わってきたのではないか。

江口 それが顕著だったのが、自衛隊での中学生の職場体験に関する反応。直江津中等教育学校の生徒が陸上自衛隊高田駐屯地で職場体験学習を行ったことについて、社民党や労組などが同校を訪れ、校長に抗議文を手渡した。その記事が2ちゃんねるのまとめサイトで反響を呼び、レスの数は3000件近くになった。

川村 リツイートもすごかった。「職業選択の自由を奪うもの」「子供の希望を踏みにじる」「的外れ」「徴兵と職場体験は違う」など、抗議した側に批判的な意見が多かった。普段は「物言わぬ市民」の意見が、ネットという自由な発言の場を通じて吹き出たわけで、抗議した側の人も驚いたのではないか。

江口 確かに抗議する側の論理に若干無理があった。しかし、同席した社民党の元市議の男性(とても温厚で人のいい方)が漏らした言葉に少し納得した。「うちにも中学生の孫がいるけど、孫が迷彩服を着てたらぎょっとするけどなあ」と。抗議の根っこにあるのはこういった気持ちだったと思う。なるほど、そう感じる人もいるのは理解できると思った。しかし、ネットでは抗議した側に共感するコメントは皆無で、抗議した側への批判一色だった。

川村 来年2月下旬から3月中旬に関山演習場などで実施する日米共同訓練にオスプレイが参加するようであれば、どんな反応が出るのだろうか。「見たい」「乗りたい」などの短絡的な意見ばかりではないだろう。

江口 オスプレイについてのコメントも、危険だと抗議する社民、共産や関連の市民団体と、肯定的なネットの意見という、自衛隊関連の記事と同じ構図になっている。右、左という枠組みで議論するのがいいとは思わないが、こうして見てくると、特に自衛隊関係は、ネットの意見が右向き一色になっている。左の人たちの意見が全然見えない。左の人も無言ではなく、もっとしなやかな論理と心持ちで主張や反論ができないものだろうかと思うし、それに期待したい。

村山上越市長に当選証書(10月28日)
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【上越市長選】

川村 10月の上越市長選挙は、結局無投票になった。1971年に上越市が誕生して以来、初めての無投票という事態。4月の糸魚川市長選、9月の胎内市長選も無投票だったし、いったいどうなっているのか。

江口 行財政改革が課題であることが大きいような気がする。福祉などにかかる固定的な経費は増える一方なのに、税収は増えず、合併特例が切れて国からの交付税が減る。行財政改革は村山市長自身が言っていたように「だれが市長になってもやらなければならいこと」だ。そのような中、だれがやっても同じような公約・政策しか打てない感じなのかもしれない。そういことが無投票の背景の一つではないか。

川村 8月に2人の大学院生が企画した映画「立候補」の上映会を見に行った。泡沫候補を扱った映画で、会場の高田世界館には多くの市民が集まった。映画を見終わって、たとえ泡沫候補であっても選挙では平等なのが健全な民主主義であり、たとえどんな候補者が出馬したとしても、無条件で信任したことになる無投票よりはましだと思った。

江口 6月に早々と32人の市議のうち28人が名を連ねた現職支援市議団が結成され、ほぼオール与党体制の中の無投票だった。私自身も、市民がその意思を表明する機会として選挙になってほしいと思っていた。そういう意味で、候補擁立を目指して動いていた共産党に期待していたが、叶わなくてすごく残念だった。こういうときこそ共産党の出番だと思っていた。
 また、記事にはしていないが、共産党以外で普通の市民の中から一時、候補を擁立する動きがあったが実らなかった。

川村 議論好きと言われる長野県では、今年の市長選で無投票はなかった。10月の長野市長選には5人も立候補している。市民意識の違いだろうか。誹謗中傷や怪文書が飛び交うほどの熱気があった昔の選挙戦が、今では懐かしい。

江口 上越市長選といえば、2009年には村山氏、上越タイムス社元社長の大島誠氏、元市長の宮越馨氏とのみつどもえの戦いだったし、前の市長の木浦正幸氏が初当選した2001年のときはたくさん候補が手を上げた中、木浦氏に一本化され、宮越氏と戦った。毎回市長選は熱気に溢れ盛り上がるものと思っていたが、今回はそういった熱気が全然なかった。

橋爪議員の市議会一般質問で談合疑惑が明らかに(12月16日)
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【談合疑惑】

川村 年末になって突然出てきたのが上越市ガス水道局発注工事をめぐる談合疑惑。橋爪法一議員の市議会での一般質問から始まり、詳細な資料に加えて、録音記録も出てきた。

江口 談合疑惑について各方面からいろいろと聞かれる。その中で多いのが「談合はみんなやっていて当たり前のことで、なんでそんなに目くじらを立てるのか」といった声。必要悪として捉えている感じなのだろうが、私はこの言い方にすごく違和感を感じる。だめなものはだめなのだ。こんなことを必要悪として認めているようでは、このまちは少しも良くならないんだと感じる。

川村 必要悪なんてことを言っていたら、戦争も、死刑も、暴力団も、天下りも、売春も全部正当化されてしまう。必要悪も悪であることを忘れてはならないと思う。

(つづく)

◇回顧2013◇ 上越タウンジャーナル記者トーク(1)
https://www.joetsutj.com/articles/52064690

◇回顧2013◇ 上越タウンジャーナル記者トーク(2)
https://www.joetsutj.com/articles/52064724

◇回顧2013◇ 上越タウンジャーナル記者トーク(3)
https://www.joetsutj.com/articles/52064924