新潟県上越市の高田本町商店街で時計や眼鏡、宝飾品の販売や修理を手がけ、長年愛されてきた「早津」(同市本町4)が、2026年6月30日に閉店する。創業から120年。地域に寄り添いながら歩んできた歴史に幕を下ろす。

店頭のからくり時計がシンボルの同店。現在は早津隆三社長(87)をはじめ、妹の松矢恵子さん(85)、弟2人の計4人で店を切り盛りする。販売以外にも長年培った技術で眼鏡の修理や時計の電池交換なども行ってきたが、後継者がいないことから今春頃、閉店を決めた。現在も店に立つ早津社長は、「(自身が)高齢となり、おぼつかないところも出てきた。無理をして、お客さんに迷惑をかけるわけにはいかない。寂しい気持ちもあるが、ここでけりを付けようと決断した」と語る。

1925年(大正14年)に日本貴金属時計新聞社が発行した「全国業界名鑑興信録」によると、同店は1906年(明治39年)の創業。祖父の勝蔵さんが現在の場所で店を開いた。当時は近所の歯科医院の依頼で金歯などの技工にも携わっていたという。早津社長は地元の高校を卒業後に東京で7年間修業し、家業を継ぐために帰郷。25歳から店に立った。妹の恵子さんも東京の短大を卒業後、21歳から家業に携わり、現在は店に立つほか、主に経理を担当してきた。父・眞一さんが社長を務めていた頃、現在の店舗での営業をスタート。景気が良い時、従業員は13人いたという。

父・眞一さんが亡くなった後は早津社長が3代目として経営を担った。低価格で眼鏡を購入できる店舗も増えるなど、ピーク時に比べると客足は減ったが、早津社長は「お客さんを新たに獲得することではなく、今までの常連さんを大切にすることを意識してきた。眼鏡の不調は疲れやすくなったり、見え方が悪くなったりと生活に支障が出てくる。長年の技術でいかに生活がしやすい眼鏡に直すかを心掛けてきた」と振り返った。
閉店を知った常連客が連日店を訪れ、「今までありがとう」と感謝を伝えたり、早津社長と記念写真を撮ったり、新たに時計を買い求める姿も見られた。からくり時計が音楽を奏でると、子供たちが喜んで眺める場面も。恵子さんによると、からくり時計を見るために時間に合わせて店を訪れる親子や子供たちもおり、「皆さんから喜んでいただけた」とほほえんだ。

早津社長は「これまで続けてきた仕事ができなくなるのは寂しい気持ち。長年通っていただき、本当にありがとうございました」と感謝した。今後は「次男とのんびり旅行でも行きたい」と話し、医師の長男が住む北海道へ出掛けたいという。