回顧2017年 上越タウンジャーナル記者トーク(3)

今年1年を振り返る記者トークの前日からの続きです。(記事中で色の変わった文字をクリックすると、その記事が別ウインドウで開きます)

史上初 市長選と衆院選のダブル選挙

川村 上越市史上初めての市長選と衆院選のダブル選挙だった。どちらも蓋を開けてみれば僅差で、勝った方にとっては薄氷を踏むような勝利だった。

江口 特に市長選の結果には驚いた。あそこまで競るとは正直予想していなかった。現職村山秀幸氏5万2609票の新人中川幹太氏が5万1147票と迫り、その差1462票。投票日の天気が少し変わっただけで結果が変わってしまうくらいの僅かな差だった。

上越市長選 開票結果
当選 村山秀幸氏 (69) 落選 中川幹太氏 (42)
村山氏 中川氏
村山秀幸 52,609票 (50.7%) 中川幹太 51,147票 (49.3%) 計103,756票

川村 衆院選も僅差だった。自民党の高鳥修一氏が9万4292票、民進党の事実上の解体で無所属になった梅谷守氏は9万2080票。その差2212票。梅谷氏の惜敗率は97.65%で、政党公認だったらきっと比例復活していた。

江口 結果を見ると、いずれも現職が勝利したが、市長選も衆院選も、市民の半数は負けた方に投票していることになる。変化を求める民意がかなりのボリュームで、2人の現職のうち特に首長である市長は慎重な舵取りが求められることになる。

川村 市長選では市を二分するような争点があったわけでないのにここまで真っ二つになった。

江口 村山市長も投票日翌日の記者会見で「相手候補と公約はほとんど差別化できない」と述べていたように、具体的な争点というものはなかったと思う。あくまで取材した中での印象だが、中川氏の主張が浸透したとか、中川氏が強い候補だったというより、行財政改革路線で2期進めてきた村山市長への批判票という感じ。こういう言い方は乱暴かもしれないが、投票所で2人の名前を目の前にして、「うーん」と悩んで、半分は「えいやっ」と変化を求めたという感じではないか。

川村 今回の市長選には最近の上越市では珍しく、ご本人には申し訳ないが、いわゆる泡沫候補もいた。最終的には、泡沫扱いされるのでは出馬する意味がないと出馬を取りやめたけど。

江口 佐渡市の後藤浩昌さん。昨年10月の県知事選では、普天間基地の佐渡への誘致やディズニーランドの県内誘致を訴え、落選していて、今回は、直江津と佐渡の間に橋を架け道路と鉄道で結び活性化を図ることや、市直営でスッポン養殖などを公約に出馬表明した。本人には悪いけど、いわゆる泡沫といわれる感じの候補だが、うちは上越地域を対象とした地元メディアなので、泡沫扱いせずに、公約なども現職など他の候補と同様に報じている。

川村 変わった人だったみたいだね。

江口 一番驚いたのは、上越市ではいわゆるマンガ喫茶を拠点として、そこで事実上寝泊まりしながら、甲冑姿で辻立ちするなど活動していたこと。マンガ喫茶で暮らしながら選挙に立候補というのはなかなかの根性だと思う。

川村 出馬しなかった人がもう1人。こちらも変わった人というと失礼だが、元上越市長の宮越馨さん。

江口 人口減少社会への処方箋として「子供年金」という政策を自ら考案して、市内各地でセミナーを開催した。その政策を記し「緊急提言」と題したパンフレットを全戸に配った。だれもが市長選に出ると思っていた。しかし、最終的には衆院の解散総選挙で市長選が1週間前倒しされたことから、政策の周知期間が足りなくなったとして断念した

川村 市政全般にわたる政策提案は村山さん、中川さんの公約が見劣りするほどで、政策通ぶりは健在だった。また76歳とは思えないほど精力的に動いていた。政治家はいつまでも政治家だね。

市役所の火災や不祥事

江口 いろいろあったが何とか3期目を勝ち取った村山市長。今年は結構災難続きだった。

川村 選挙前8月6日未明には市役所の第2庁舎が全焼する火災が発生、今月12日の市所有の雪室貯蔵施設が全焼。1年に2つも市所有の建物が燃えるというのは聞いたことがない。

火災で燃えた市役所第2庁舎(8月6日午前3時半過ぎ撮影) DSC_4270

江口 また6月には職員が庁舎内で同僚の私物や現金などを盗んで警察に逮捕される不祥事もあった。

川村 市職員の不祥事を調べてみると、ここ3年で飲酒運転が2人、脅迫容疑が1人、恐喝未遂が1人、今回の窃盗が1人と合計5人が懲戒処分を受けている。村山市長は再三にわたって職員の綱紀粛正を求めているが、これだけ続くと頭の痛いところだろう。

新水族館開業と体操アリーナ

江口 悪い話ばかりではなくて、秋には高田公園にオーレンプラザがオープンした。

川村 村山市長が8年前に初当選したときの公約で、公約の中では唯一の箱物だったね。当時は「(仮称)厚生産業会館」と呼ばれていて、建設場所や建設の是非などさまざまな議論があった。

江口 完成した施設を見るとなかなかいい施設だった。雰囲気もいいし、子育て施設も充実していてきっと多くの市民に活用されると思う。オーレンプラザのように、賛成反対さまざまな議論がある中、それぞれの声を聞ききながら粘り強く議論を重ね実現させるというのが村山市長の手法だ。性格なのだろうが本当に真面目に本気で議論するので、その辺も原因で今回の選挙では苦労したという感じもした。

川村 大潟体操アリーナも市民の間に賛否がある。当初5億円のものが、内容も変わったのだが26億円になり、本当にこれが必要なのかという議論が尽きない。

江口 これについては市長選で、中川氏は何故か表立って争点にしなかった。市長の地元の大潟区ということも影響して、疑問に感じている市民は多いと感じる。12月議会で「(市長選の結果を受けて)白紙で考え直す気はないか」と質問した議員もいたが、そういうつもりはないようだ。

川村 来年の上越市の目玉は何と言っても新水族博物館がオープン。これは市民こぞって歓迎しているし、わたしも楽しみだ。

(第4回に続く)

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