回顧2019年 上越タウンジャーナル記者トーク(1)

2019年も残り少なくなりました。今年も「上越タウンジャーナル」をご愛読いただき、ありがとうございました。今年1年間、新潟県上越地域で起きたいろいろなニュースを振り返り、エピソードを交えながらトークを繰り広げます。今日はその第1回です。

ヨーカドー跡に関心

記者A 今年の上越経済で最も関心があった出来事は、イトーヨーカドー直江津店の閉店だろう。5月12日に閉店後、何が入るか注目された。食品スーパーにはピアレマートが決まり、10月25日にオープンした。また、2階は無印良品(良品計画)が来年夏に出店することで決着した。

イトーヨーカドー直江津店が閉店(2019年5月12日)
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記者B 核店舗の誘致は難しく、1年以上かかる場合が多いが、直江津店は半年もかからずスーパーが再開されたのは良かった。

記者C 無印良品は“上越初出店”と思っている市民は多いが、正確に言うと「再出店」となる。1985年(昭和60年)11月、上越市土橋にオープンした大型店「イヅモヤ・ジャスコ高田店」(現在の市民プラザ)の1階にあった(注1)。いつ撤退したのかは分からないけれど。

記者B 大躍進してきたコンビニがついに飽和状況になったと言われている。ドラッグストアとの競合や、自社競合もあり、数年前から店舗数が伸びていない。

記者A 上越ではイトーヨーカドーだけではなく、木田1の「ハローツゥ木田店」が7月に閉店したし、北城町4の「フレッシュかねだ」も10月に閉店した。ほかにも閉店のうわさが出ていて、スーパーも淘汰、再編成は避けられない。

3ホテルで計516室の脅威

記者C 上越経済の新しい動きとしては、上越妙高駅西口でのホテル建設ラッシュかな。「スーパーホテル」(107室)と、「東横イン」(248室)が建設中で、来春までにオープンする。既に東口で営業しているアパホテル(161室)と合わせると、計516室となる。上越市内で営業している既存のビジネスホテルは1100室ほどなので、その半分ほどの部屋数になる。来年は供給過剰の影響が出るのは間違いないね。

上越妙高駅西口のホテル(2019年12月)
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記者B 既に影響は出ている。今年9月、新光町3のホテル「ハーバルスパ&ホテル元気人」(66室)が閉館した。妙高市柳井田町の「ベストイン新井」(54室)も、業績好転の見通しが立たず運営会社が撤退した。その後、地元企業がホテルを引き継いだが、既にホテルの需給環境が厳しくなっているのは間違いない。

記者C 新しいホテルはチェーンの特典があったり、ネット環境なども整っている。温泉付きもあり、客は便利で快適な方を選ぶだろう。老朽化しているホテルだけでなく、全般に影響が出てくるだろう。

上越市の人口が6年間で1万人減

記者A 上越市の人口は2010年の国勢調査では約20万4000人。2040年の推計によると15万6000人まで減る。「上越市の人口が“4時間半に1人ずつ”減っている!」という記事に書いたが、上越市の人口はこの6年間で1万人も減っている。少子化だけではなく、関東地方などへの転出が多いのが原因だ。

記者C 少子化と転出という2つの要因が、人口減少を加速させている。1年間で牧区に相当する人口が消滅したのだから、かなり深刻だ。

記者B 高田公園にスターバックスコーヒーが建設中だが、国交省の資料によると、スタバの立地は人口27万5000人だと存在確率80%だが、人口17万5000人なら50%となる。人口減少が続くと需要が減り、スタバどころか大学、娯楽施設、結婚式場、飲食チェーンなどが撤退していく状況が来る。

記者A 高齢者の寿命が伸びているからまだ人口が維持できているが、実態は「人口半減社会」だと思う。

記者C 上越市もコンパクトシティ化を進めたいところだが、過疎化と中心市街地の空洞化が進み、商業施設や住宅地が郊外に拡大している。人口減少で税収が減っていく一方、郊外化によって道路の維持費、除雪費、上下水道の維持費などは増加していく。単純計算では、人口密度が半分になると、市民一人あたりの経費は2倍になる。

記者A 富山市のようにLRT(次世代型路面電車)などの公共交通を整備して中心市街地の再開発を進め、補助金を出して散らばった人口を居住推進地区に集める手法を参考にしたいが、広大な面積の中山間地をかかえる上越市で同じことができるかどうか。あるいは別の手法が必要かもしれない。

キャッシュレス時代は来るか

記者B 10月の消費増税に伴う国のポイント還元制度もあり、上越地域でもキャッシュレス決済が随分普及してきた。店はまだ限られるが、現金を忘れても買い物や食事に困ることがなくなった。中国や韓国のように、朝市の露店でも使えるようになるには何年もかかるだろう。

記者A 井上ひさし氏が農業問題について論評した『遅れたものが勝ちになる』という著書があるが、それと同じことが起きた。ATMが少なく、偽札が多い国でも、スマホが使えればキャッシュレス社会へ一足飛びだ。

記者C 上越妙高駅西口の「フルサット」内に11月、レジなし完全キャッシュレスの店舗ができた。ユーザー登録の後、スマホのQRコードを店舗入口の端末にかざし、あとは商品を取って店から出ると決済まで完了する。

記者B 比較的高齢者の利用の多いスーパーやドラッグストアの対応に感心した。スマホもクレジットカードも持っていない人にも対応しなければならないため、独自のプリペイド式の電子マネーを導入した。イチコの「コジカ」、クスリのアオキの「アオカ」などだが、買い物しながら見ているとなかなか利用されている。

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記者A 9月に新潟市中央区で無人&キャッシュレスの書店がオープンするなど、新しいトレンドになってきた。

記者B 中国では自動車のETC(自動料金収受システム)の普及を進めているけれど、まだスマホ決済の人が多く、料金所で渋滞している。ETCは2秒で決済できるが、スマホ決済では15秒ほどかかり、渋滞の原因になっている。

記者C QRコードやバーコードを読み取る方式のスマホ決済は、たしかに面倒で時間がかかる。首都圏などでSuicaを日常的に使っていた人は、技術が逆行している感じがするという。

記者A 日本ではSuicaなどの非接触ICカード方式の「FeliCa」という素晴らしい技術を持っているのだから、国策として配っておけば良かった。金融機関が反対しただろうけれど。

記者B 今後は顔認証決済や人体へのマイクロチップ埋め込みなどへ進むと思われるけれど、個人情報保護をどうするか。法整備が追いつかない日本の状況では、一党独裁の中国が先頭を突っ走るのは間違いない。

第2回につづく


注1)記事を公開後、1980年代後半に上越市土橋の「イヅモヤ・ジャスコ高田店」(今の市民プラザ)に入っていたのは、ジャスコのプライベートブランド「シンプルリッチ」だったのではないかという指摘があり、調査中です。情報をお寄せください。info@joetsutj.com