人口20万人の上越市に「日本一」「世界一」を冠した飲食店が3店もある。本当に「日本一」や「世界一」なのか。その根拠は何なのか。記者が店に出向き、店主に話を聞いた上で、実際に食べて確かめてみた。
店名が「日本一うまいトコロテン」(大島区)
店の前は星峠に通じる旧街道で、昔は行商人や旅人らが峠越えを前に峠にあるこの茶屋に立ち寄った。冷たい岩清水で喉をうるおし、トコロテンで一息入れた。個性的な店名は昭和30年頃、なじみの行商人がプレゼントしてくれたという青いのれんの文言を、そのまま使っている。
創業は1885年(明治18年)。五代目店主の武江稔さんは、祖父である三代目、正一さんから受け継いだ製法をかたくなに守る。原料のテングサは高品質とされる伊豆諸島産の数種類をブレンドして使う。「テングサ100%」だから、トコロテンは艷やかで風味が抜群だ。
トコロテン製造や冷却用に使う岩清水は、「新潟県の名水」に選ばれている通称「トコロテンの水」。水温は10~11度と冷たい。pHは6.9で軟水のため、コーヒーやお茶用に汲んでいく人もいるそうだ。
この店のトコロテンは塗り箸一本で食べる風習だが、弘法大師が杖で突いたら清水が湧き出たという伝説にちなむ。また、箸で持ち上げてトコロテンが切れなければ、鮮度がいい証拠でもあるからだという。
1皿300円。ほかにかき氷、ソフトクリーム、棚田米の塩むすび(土日曜限定)もある。
◇「日本一うまいトコロテン」
新潟県上越市大島区下達460-2(地図)
電話/025-594-3701
営業時間/9:00~18:00
営業日/4月第4土曜~10月第2月曜(体育の日)
期間中無休
日本一うまいラーメン「塩の道食堂」(牧区)
おどろおどろしい筆致で描かれている「日本一うまいラーメン」の看板。店内の壁には至るところに新聞記事やPOPが貼ってある。金井旅館に併設し、2年前に「塩の道食堂」として開店した。
旅館は今年120周年を迎えた。店の前の道路(毘子街道)は江戸時代、柿崎の犀浜から牧峠を経て信州・千曲川まで61kmの「塩の道」が通じていた。糸魚川から松本を通る塩の道とは別の、塩の道である。越後から酒、塩、米などが運ばれ、信州側からは内山紙、大豆などが運ばれた。店主の和栗俊一さんによると、金井旅館は当時の「飯宿」がルーツだという。
その「塩の道」にちなんだのが「塩の道 特製塩ラーメン」(700円)。魚介だしに豚骨を加えた深みのあるスープに、やや太めのちぢれ麺だ。タンメンのように野菜炒めがたっぷり入っていて、極太のメンマ、分厚いチャーシュー、なぜか卵焼きもトッピングされている。具が多くてなかなか麺にたどり着けず、麺は1.5玉もあるので全然減らない。ボリュームに圧倒されていたら、ライスも付くという。大食漢でも満足するだろう。
なんで「日本一」なのか。合宿で旅館に泊まった学生や客が「日本一」と太鼓判を押したからだという。
◇「金井旅館 塩の道食堂」
新潟県上越市牧区柳島118(地図)
電話/025-533-5027
営業時間/11:00~15:00
定休日/無休
世界一のボンゴレ(三和区)
新井柿崎線の錦交差点に案内板があり、「世界一のボンゴレ」ののぼり旗がはためく。案内板から1.5km。店名の通り、森林(フォレスタ)の中にあるレストランだ。
店主の田ケ窪隆道さんは、ダンプの運転手や家具職人を経て、料理の道へ入った異色の経歴の持ち主。「料理修行はまったくしていない。見よう見まねで始めた。だから固定概念にとらわれず、自分が好きなように作ってきた」という。
ラーメンの添加物「かん水」や化学調味料に敏感で、「すぐに腹をこわし、1時間も苦しむ」。料理の第一歩は「自分のため」でもあった。
試行錯誤の中、パスタには化学調味料入りのブイヨンなどを使う代わりに、天然素材からとった和風だしを使うことを考えついた。スープパスタなどに使うと、「スープまで全部飲んでいく人が多い」と話す。
さて、「世界一」のボンゴレだが、貝は三重県桑名市のハマグリを使う。アサリよりも大きくて食べごたえがあり、身がふっくらしている。ほかに、ガーリックやチーズなども「世界一」にふさわしく、選びに選んだ一級品を使用。麺は群馬県のメーカーに特注している。
ボンゴレロッソ(1400円)、ボンゴレビアンコ(1400円)と、野菜をふんだんに使ったスペシャル・ロッソ(1500円)がある。たっぷり食べたい人に、大盛り1.5倍(+300円)、2倍(+500円)も好評だ。
◇「森のレストラン フォレスタ」
新潟県上越市三和区三和区島倉2537(地図)
電話/025-532-2000
営業時間/11時30分~14時00分、夜は予約制
定休日/月曜(祝日の場合は翌日)、不定休あり