「上越産岩ガキ」を夏の目玉に 今年から地元出荷開始 官民で飲食店などにPR

これまで地元には流通していなかった天然の「岩ガキ」を新潟県上越市の新たな夏の目玉にしようと、官民による消費拡大に向けた取り組みが今夏、本格スタートした。上越ではカキの生食の習慣が根付いていないことなどから、これまで上越産岩ガキは全て新潟市に出荷されていた。2024年7月16日には初めて地元出荷が行われたほか、一印魚市場(木田3)で飲食店などを対象にした講習会と試食会が開かれた。

上越産岩ガキ

冬に旬を迎える養殖のマガキと違い、天然の岩ガキは夏が旬。県内では村上市山北地区が産地として知られ、夏の味覚を目当てに観光客も多く訪れている。

上越産岩ガキは米山からの栄養豊富な伏流水が湧き出す柿崎や大潟沖で育ち、ダイバーが一つ一つ捕っている。岩ガキ漁ができるダイバーが1人しかいないため、漁獲量は直近5年間で約1〜3tで推移し、2023年は1.5t。産地である山北地区産の66.4tには到底及ばないが、県によると柿崎から直江津にかけての漁場には推定で約450tの岩ガキが眠っているという。

飲食店や関係者約30人が参加した試食会

消費拡大に向けては、上越市漁協や上越商工会議所、魚市場、県、市など官民で地域の水産業の活性化に取り組むプロジェクトチームが2023年度から5年計画で進めている。初年度は飲食店や関係者を招いた講習会と試食会を開催。地元への出荷を開始した本年度は、飲食店にちらしを配布して周知を図ってきた。取り扱う飲食店には、専用ののぼり旗を配布する。

取り扱い飲食店に掲げられるのぼり旗

地元飲食店での取り扱いが少ない理由は、生食の習慣が根付いていないことに加え、「ノロウイルス」や「食中毒」への懸念だという。試食会前の講習会で、普及を進める県水産課の担当者は「ノロウイルスによる食中毒が多く発生するのはマガキが旬の冬で、発生源の9割はカキ以外。夏場に発生する可能性は低い」と話し、県内沿岸で捕る岩ガキは、県が定めた岩ガキの生食の衛生確保に関する要綱に基づき、漁場の水質も含めて検査が行われていることを説明した。

また上越保健所からは、夏の食中毒の原因となる腸炎ビブリオの予防法として、低温管理と殻を開ける前と開けた後の身の水洗いの徹底が呼び掛けられた。

上越産岩ガキの現状や食中毒対策についての講習会

この日の試食会には約30人が参加し、今シーズン初出荷された上越産岩ガキを生ガキと蒸しガキで味わった。「濃厚でうまい」「身が大きい」などの声があった。妙高市で飲食店を経営する女性(46)は、「店で出したいと殻の開け方を練習した。上越産岩ガキに関する情報が少ないので、飲食店に向けてPRしてほしい」と話していた。

上越産岩ガキ(手前:生ガキ、奥:蒸しガキ)

プロジェクト代表で上越市漁協の仲田紀夫組合長は、「講習会も2回目で岩ガキに対する正しい知識を身につけてもらえた。今年の岩ガキも濃厚でうまいので、味わってみてほしい」と話した。

問い合わせは上越市漁協025-543-3013