新潟県上越市中央1の山本味噌醸造場(山本幹雄社長)は2021年9月7日、同社の看板商品「雪ん子みそ」に、水中スピーカーで音楽を響かせて発酵を促した「音で育てたおいしい味奏(みそう)」を発売した。同市岩木の水中音響機器メーカー、ウエタックスとの異業種コラボで生まれた新商品だ。
コラボを持ち掛けたウエタックスは、東京五輪のアーティスティックスイミングの会場で水中スピーカーが採用されるほどの高い技術力を生かし、信州大学と共同で、音を使って植物の成長を促す水耕栽培の開発などにも取り組んでいる。今回は、音が発酵速度を変える作用を利用し、地元で新たな商品を生み出そうと、市の補助金を活用してみそ作りを企画した。
2019年から醸造実験を開始。みその中に直接スピーカーを入れるため、塩害や滅菌処理に耐えられる水中スピーカーを新たに開発した。音程の異なるピアノ調の曲など3種類の音源を流し、発酵度合いや味の変化を信州大学が分析。熟成に最適な周波数と、上越ゆかりのロックアーティストの曲をミックスした音源を24時間流し、約100日間熟成したみそを完成させた。
たるの大きさの違いもあるが、雪ん子みその約2倍の速さで熟成が進んだというみそ。ウエタックスの植木正春専務(44)によると、なぜ音楽をかけると発酵が進むのかは「まだ研究中。周波数が関係しているとみている」。雪ん子みそと比べて色が濃く、熟成の香りとコクが増したまろやかな味の仕上がりに、山本社長(48)は「ここまで熟成が早く進むとはびっくり。味も香りも雪ん子みそとは全く別物になった」と驚く。たるの外側にスピーカーを取り付けるなどして音楽を聞かせたみそは全国にもいくつかあるが、直接みその中にスピーカーを入れたものは「聞いたことがない」とし、「ウエタックスさんの技術があったからこそ実現した」と話す。
ウエタックスが食品業界とのコラボで商品化するのは初めて。植木専務は「より多くの人に味わってもらい、地元の活性化ができれば」。山本社長も「異業種とのコラボは初めてで、(開発は)楽しかった。普段使いはもちろん、上越の面白い手土産としても使ってもらえたら」と期待を寄せている。
1袋500g入り972円。初回仕込み分は300袋限定だが、随時仕込みを行う。山本味噌の本店とエルマール店、ぽんしゅ館新潟駅店と越後湯沢駅店で販売している。問い合わせは山本味噌 025-543-2283 。