昔ながらの素朴な味の“アイスキャンデー”が人気の新潟県上越市稲田2の「井上冷菓」が2021年7月10日、リニューアルオープンした。アルミサッシの引き戸に、のぼり旗の文字がたいてい風で裏返っていた“昭和”の旧店舗から、木目を生かした建具とガラス張りが特徴の洗練された店構えに大変身。しかし、破格の1本40円の値段と製法、さっぱりとした甘さは一切変わらず、創業83年の味を頑固に守り続けている。
同店は1938年(昭和13年)創業。アイスキャンディーは「あずき」「ミルク」「チョコ」の3種類のみ。アイスキャンディー店を始める前は野菜や果物を販売していたことから、屋号の「かぼちゃや」と呼ぶ年配客もいる。
入院先で「続けて」と励まされ
店舗改装は、今年5月に2代目店主の井上続さん(86)が入院したことがきっかけ。続さんは元々年齢と体力的なことから、食品営業許可が切れる9月末で閉店することを考えていたが、入院先の医療スタッフや患者などから「続けてほしい」と励まされたという。
その話を聞いた同居する次女の橋本佳奈さん(50)が、改装を決意。長年「いずれは店をやりたい」と考えていたこともあり、店舗兼住宅の外壁工事に合わせて急きょ、改装工事も行った。新型コロナウイルス対策の店舗改装の補助金も後押しした。幸いにも続さんは無事退院し、6月から佳奈さんがアイスキャンディー作りの見習い修行を始めた。
変わったのは店構えだけ
改装で店の雰囲気は変わったが、原料と製法、値段は一切変えていない。アイスキャンディーの原液を煮るのは、創業当時から使っているかまど。火加減の調整が難しく手間がかかるが、同店は「かまど炊き」にこだわっている。原料はシンプルで、あずきの場合は小豆、砂糖、水あめ、でんぷん、ブドウ糖のみ。防腐剤や着色料、人工甘味料は使っていない。
まとめ買いには、茶色の紙袋に入れ新聞紙で包むのも以前と同じだ。値段も据え置きで、10本買っても税込み400円。あまりの安さに「これって消費税も入っているんですか」と、客が申し訳なさそうに尋ねる。
「昔のいいものは変えてはいけない」
かまどにくべるまき割りから始めた佳奈さんは「先代たちが築いてくれた土台があるので、改装ができた。昔のいいものは変えてはいけない」と語る。様変わりした店舗に常連客が驚く一方で、若い世代の客が増えつつあるという。
続さんは「(店が続くことになり)ありがたい。がんばります」と話している。
かまど炊きのあんこを使った、もう一つの人気商品「たいやき」は10月頃から始まる予定。営業時間は午前9時30分〜午後5時(たいやきは材料がなくなり次第終了)。不定休。025-523-2510。