今年1年を振り返る記者トークの前日からの続きです。(記事中で色の変わった文字をクリックすると、その記事が別ウインドウで開きます)
上越の回転ずし戦争 スシロー撤退の舞台裏
江口 今年は上越市内では回転ずしを巡って、めまぐるしい動きがあった。8月には「スシロー」が出店からわずか1年で撤退した。地元の富寿しがハイテクを使った「廻鮮富寿し極みや」を11月にオープンさせ、お次は「くら寿司」の来春進出のニュースだ。特にスシローの撤退は「いったい何があったの」と、多くの人が不思議がった。
川村 事情通によると、スシローはネタの原価率が高く平均で50%を超えるので、空席が多いと採算が取れないらしい。開店当初はにぎわったが、すぐに混雑は解消された。便利なはずの予約アプリも意味がなかった。
江口 すぐ近くのかっぱ寿司はそれなりに入っていた。はま寿司と業界トップを争っているスシローが負けるとは、不思議なことだ。
川村 スシローでは、席ごとに色分けされたトレイの上にオーダー品が載って流れてくるシステムが分かりにくく、落ち着いて食べられないという声が多かった。回転レーンのないフルオーダーのシステムは、上越では「魚べい」が先駆をつけたので、スシローのオペレーションが古く、不便に感じたかもしれない。
江口 かっぱ寿司の「平日90円」が効いたという説もある。
川村 高級ネタの回転ずしを食べたい人は「廻鮮富寿し」へ行くので、差別化ができなかったのか。かっぱ寿司の方が子供連れの家族に使いやすい雰囲気がある。スシローはパチンコ店の駐車場内に立地していたので、子供連れに抵抗感があったのかもしれない。
江口 廻鮮富寿しの上越中央店が、ハイテクを使ってオペレーションを自動化した「極みや」にリニューアルされた。
川村 人手不足が背景にあり、早めに手を打ったのだろう。タッチパネルでの注文のため、精算も自動化されたし、パーティションで区切られ、落ち着いて食べられる。上越中央店は実験的な要素もあり、評判が良ければ他店舗でも順次切り替えるようだ。
江口 スシローが撤退したというのに、今度は店舗数で業界3位の「無添くら寿司」が進出するね。
川村 出店する下門前は、イオン上越店に近くスシローより立地が良い。はま寿司、かっぱ寿司、元気寿司(魚べい)の大手に加え、北陸の「きときと寿し」、上越の「廻鮮富寿し」という既存勢力の中に、くら寿司がどう食い込んでくるかが注目だ。
最後にどうしても食べたい! とんかつ大矢の大行列
江口 「とんかつ大矢」の閉店時の行列はずいぶん話題になった。
川村 上越タウンジャーナルの記事が出たのが10月8日。直後から行列が始まり、10日には「行列がすごくて、食べずに帰ってきた」という声を聞いた。ピークには200人以上が行列を作り、6時間並んだ人もいたという。なお、大矢さんのきょうだいが経営している上越市頸城区西福島の「橋場食堂」では、味や見た目がほぼ同じかつ重を食べることができる。
江口 行列といえば、柏崎市高柳町から上越市板倉区に移転オープンしたラーメン店「春紀」も連日すごい。普通の住宅が店舗で、看板もないという隠れ家的要素もおもしろく、評判を呼んだ。
川村 2回並んで食べたが、2時間は覚悟しないと。地元の人はなぜ行列ができるのか不思議に思っているらしい。店主の「シンプルなものをいかにおいしく食べさせるかが料理人の腕」との話に感銘した。板倉区には、西洋料理の「プルミエ」、「江戸っ子寿し」、「割烹かまた」、ラーメンの「小政食堂」「桃の木亭」、日本そばの「いたくら亭」、又右衛門まんじゅうの「小林堂商店」など、おいしい店が集まっているのが不思議だ。
江口 今年は他にも閉店した地元店が多かった。
川村 丼で食べるもりそばで有名だった妙高高原駅前の「加藤そば店」が7月31日に閉店した。前年8月末には隣の「きくや高原そば」も閉店しており、駅前にそば店がなくなってしまった。「あんもち」で知られた石田屋も2011年5月に閉店しているので、駅前は閑散とした。
江口 昨年閉店した上越市仲町4の「玉屋そば店」は、明治5年(1872年)創業だし、古くからの日本そば店が相次いでなくなっている。
川村 大手チェーン店などがどんどん進出してくる中で、このような地元の人に愛されてきた家族経営の店がなくなっていく。店主の高齢化と後継者難は解消することはないので、来年以降もこの傾向は続きそうだ。
(第4回につづく)
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