深い雪の中で育まれた雪下キャベツ「ゆきひめ」 上越市牧区棚広で収穫最盛期

豪雪地の新潟県上越市牧区棚広で2023年2月、深い雪の下で栽培することで甘みを凝縮させた雪下キャベツ「ゆきひめ」の収穫が、最盛期を迎えている。地元の農事組合法人「棚広生産組合」(羽深栄一組合長)が雪を生かした特産品を目指し、本年度から本格的に栽培を始めた。畑に積もった約1.7mの雪の下から掘り起こしたみずみずしい“掘りたて”を、直売所などで販売している。

収穫最盛期を迎えた上越市牧区棚広産の雪下キャベツ「ゆきひめ」

中山間地で棚田が広がる棚広集落にある同組合は、35戸、組合員52人で構成し、コシヒカリをはじめ、漬物用ウリ「カリモリ」やソバなどを栽培している。雪下キャベツの栽培は、例年約2.5mの積雪がある冬期間の新たな収入源の確保と、高齢化と人口減少が進む集落で住民が顔を合わせる機会にと、始めた。ネーミングは、同区の特産品に「雪太郎大根」があることから“ゆきひめ”とした。

「雪中キャベツ」が特産品の長野県小谷村に組合員が研修に出向くなどして数年かけて準備を進め、昨年度に試験栽培を実施。本年度は7月下旬に種をまき、カリモリの収穫が終わった8月中旬に約1200株を畑に定植した。畑で根を付けたまま約1か月間雪の下で育て、2月から収穫が始まった。

収穫はまずショベルカーで畑の雪を除雪

スコップでゆきひめを掘り起こす組合員

3回目の収穫となった17日は、畑には約1.7mの積雪があり、ショベルカーで除雪した後、組合員ら4人が、スコップで雪の中からキャベツを掘り起こした。雪下キャベツは、凍らないよう寒さから身を守ろうと糖分が増えて甘みが増すと言われている。糖度は通常の6〜7度に対し、10度以上になる場合もあるという。

組合役員の羽深一俊さん(77)によると、昨年度の試験栽培は種まきが遅く小ぶりだったが、本年度は大きなものでは約3kgもある。「芯の上の部分は糖度が10度あった。みずみずしさもある」と話す。収穫作業に汗を流した田村一枝さん(72)は「生で食べるのがおすすめ。そのままでも、手でちぎって塩昆布とゴマ油を少し混ぜてもおいしい」と話した。

甘さとみずみずしさを最高の状態で提供するため、収穫は毎回、注文数と直売所での予想販売数を合わせた数のみ、畑から掘り起こしている。収穫作業は3月いっぱい続く見込みで、同集落で活動する地域おこし協力隊員、益子泉さん(35)は「集落みんなで頑張って売り切りたい」と意気込んでいる。

同市大道福田にあるJAえちご上越の農産物直売所「あるるん畑」では、毎週火、金曜の昼前頃に店頭に並ぶ。価格は2kgで500円。個別注文は同組合 025-533-6495 で受け付けている。

イラストが描かれたシールを貼り付けて販売