医師不足を背景に規模縮小が続き閉院方針が示されていた新潟県上越市東雲町1の新潟労災病院について、県は2023年12月4日、2025年度中をめどに閉院することを示した。同日夜開かれた県や上越地域の市、医療関係者による医療構想調整会議で、新潟労災の医療機能を市内6病院に移行する再編計画の方向性が了承された。病床199床は移管せず機能のみを移行し、年間1000件を超える整形外科手術は県立中央と上越総合に、歯科口腔外科は外来も含め上越地域医療センターに移行される。
再編計画では閉院時期について、移行までの期間が長期化すると医療人材が離れる懸念から早期の再編が必要とし、2025年度中をめどとした。
整形外科と脳神経外科の手術は県立中央と上越総合に移行し、障害者歯科やインプラント治療など専門的診療を担ってきた歯科口腔外科の外来と手術は上越地域医療センターに移行する。
救急搬送や急性期の入院は県立中央と上越総合で受け入れる。回復期リハビリ病棟の入院は上越地域医療センターを中心に知命堂、県立柿崎、さいがた医療センターを加えた4院が分担する。内科や整形外科、リハビリテーション科など13科の外来は近隣の診療所やクリニック、病院で対応する。
医療スタッフの移行は、情報の提供と共有を図り、受け皿となる6病院が新潟労災と連携しながら進める。
会議では受け皿となる病院の医療スタッフの充足や設備の整備を求める意見が出た。歯科口腔外科を新設することになる上越地域医療センター病院の古賀昭夫院長は「手術室は老朽化していて相当な改修が必要。病院が建て替えを前提にしており、課題が山積している」などと述べた。
新潟労災病院の傳田博司院長代理は「労災病院を残してほしいという住民の方の強い思いもあったが、理解をいただきたい。再編まで段階的に縮小していくことになると思うが、可能な限り診療は続けていく」と話した。
県は調整会議の内容についての住民説明会を今月中に上越市と糸魚川で開催する。
1958年に開院し、独立行政法人労働者健康安全機構(神奈川県川崎市)が運営する新潟労災は、医師不足により稼働病床数が4年で半減するなど機能低下が著しい状況となっている。今年6月の調整会議では新潟労災の医療機能を周辺病院に移し、再編後に閉院する方向で合意していた。