医師不足を背景に規模縮小が続く新潟県上越市東雲町1の新潟労災病院の将来の閉院方針など、上越医療圏の医療再編に関する市民説明会が2023年9月14日夜、同市中央1のレインボーセンターで開かれた。出席した直江津地区の地元住民や患者からは閉院方針に対し、「閉院ありきなのか」など存続を求める声が多数上がった。
説明会は県と上越市が共催。6月の上越地域医療構想調整会議で閉院方針が示されて以降、初めて開かれ、定員80人に対し71人が出席した。
独立行政法人労働者健康安全機構(神奈川県川崎市)が運営する新潟労災は、医師不足により稼働病床数が4年で半減するなど機能低下が著しい状況となっている。調整会議では新潟労災が担う医療機能を県立中央、上越総合、県立柿崎、知命堂、上越地域医療センターの5病院を中心に移管し、再編後に新潟労災は閉院する方向性で合意。年内にも機能を引き継ぐ病院の分担や施設整備、スタッフの移行に向けた一定の方向性を示す方針だ。
説明会で県地域医療政策課の菊池雅明課長は、「閉院が確定したわけではないが有力な選択肢」とし、「今の医療機能の低下の状況では、再編や集約をすることで地域医療全体を守っていく」と理解を求めた。また新潟労災の傳田博司院長代理は「地域の皆様にご迷惑とご心配をおかけし、おわび申し上げる。今後決定される機能再編が完全に実施されるまでは、安心安全で質の高い医療を提供していく」と述べた。
出席者からは「(閉院報道の前に)説明会を開くべきだった。丁寧に説明を尽くしてほしい」「直江津から上越総合病院もなくなり(2006年移転)、新潟労災もなくなったら、地域にとっては非常に困る」「閉院ありきで話が始まっている。市民の気持ちを分かってほしい」など、閉院方針に反対する声が上がった。急性期ではなく、療養型や整形外科に特化することによる生き残りを望む意見や、「子供や孫のことを考えると、病院がなくなったら困るという今の都合だけで考えていいのか」という声もあった。
県と市は調整会議の検討に合わせて、今後も説明会を開く予定。市民からの質問や意見は市が窓口となって対応するとしている。