新潟労災病院が閉院へ 上越市内5病院に機能再編・集約 医師不足背景

病床数の減少など医師不足による機能低下が続く新潟県上越市東雲町1の新潟労災病院について、医療機能を再編し、県立中央病院など同市内5病院を中心に集約する方針が2023年6月21日、県や上越地域の市、医療関係者による医療構想調整会議で決まった。再編後、新潟労災は閉院する見通しで、今年度中に具体的な再編計画を策定する予定。

医療機能を再編する方針が決まった新潟労災病院

半世紀以上地域医療を支える

独立行政法人労働者健康安全機構(神奈川県川崎市)が運営する新潟労災は1958年に開院。半世紀以上にわたり地域医療を支えてきたが、近年は医師不足を背景に、稼働病床数や救急車受け入れ台数の減少など機能低下が著しく、今年1月から県や医療機関が対応策の検討を進めてきた。

医師不足 病床数も5年で半分以下に

同日、上越医師会館で開かれた「上越地域医療構想調整会議」での県の説明によると、最大360床だった新潟労災の許可病床数は現在199床に。8病棟あるうち稼働しているのは2病棟のみで、稼働病床数は2018年の235床から2022年には106床まで減少した。2018年には18人だった医師数は、2022年には11人に減り、今年4月からは常勤の内科医も不在となっている。2022年度の救急車受け入れ台数は513台で、2016年度の3分の1ほどになっている。

21日に開かれた上越地域医療構想調整会議

上越市内5病院に機能移管

会議ではこうした現状を踏まえ、新潟労災が担う医療機能を県立中央、上越総合、県立柿崎、知命堂、上越地域医療センターの5病院を中心に移管し、再編後に新潟労災は閉院する方向性で合意した。今秋の第2回会議で具体的に機能を引き継ぐ病院の分担や施設整備、スタッフの移行に向けた対策を話し合う。

労働者健康安全機構の藤枝茂理事は「県から示された機能再建の方向性については、新潟労災病院と連携しながら早期実現に向けて協議に臨み、患者や地域の方々から理解を得られるよう取り組んでいく」。会議終了後、新潟労災の傳田博司院長代理は「患者や地域の方々には大きな不安を与えてしまうことになるが、安全、安心の医療を提供していくためには必要なことと丁寧に説明していく」と述べた。

中川上越市長「大変残念」

再編方針を受け、上越市の中川幹太市長は22日、「閉院の方向で機能の再編の検討を行うに至ったことは大変残念。市としては上越医療圏域全体の医療機能の低下を避けるため、既存病院の機能の強化に向けた議論に積極的に参画し、市民の安全・安心の確保に最大限努める」とのコメントを発表した。