空き家改修した「分散型ホテル」が上越市中郷区に開業 周遊促し地域活性化目指す

地域に点在する空き家を一棟貸しの客室としてリノベーションし、地域一帯を宿泊施設に見立てた分散型ホテルの「町宿Oranchi(オランチ)」が2023年8月、新潟県上越市中郷区に2棟オープンした。今後妙高市内にも展開予定で、空き家問題解消のほか、泊食分離スタイルでまちなかの飲食店や商店の利用を促し、地域経済の活性化を目指す。

上越市中郷区板橋の「町宿Oranchi」レキシ棟

空き家再生や廃材活用など、地域課題解決に取り組む妙高市東陽町の山﨑建設と、パートナー企業でホテル運営事業などのロコウェイ(長岡市)によるプロジェクト。分散型ホテルは空き家の活用はもちろん、フロント、宿泊棟、飲食などのホテル機能を地域内に分散させることで回遊性を高め、経済効果も期待されることから全国的に増えている。

地域の暮らしを体験してもらうことも狙いの一つで、山﨑建設の山﨑健太郎社長(43)によると、最終的には移住者向けに宿泊棟を販売し、新たな空き家のリノベーションを続け、ホテルとしては常時5棟ほどを運営していく計画だという。「空き家を減らして移住による定住人口を増やす。循環して続けていくことを目指している」と話す。

レキシ棟の寝室。壁には妙高山と二本木駅のスイッチバックをデザイン

ホテル名の「オランチ」には、利用者に我が家のように過ごしてほしいなどの思いを込め、親しみやすい方言を使った。先駆けて同区内にオープンした2棟は、高天井や太い梁が目を引く築100年近くの古民家に、北欧風のインテリアを織り交ぜたレキシ棟(板橋)と、藍染めなど地元作家の作品を随所に取り入れ、庭でサウナなども楽しめるミライ棟(藤沢)。地域への玄関口としてフロント業務は妙高市内のカフェ「MYOKO COFFEE北新井店」が担い、チェックイン後、宿泊棟へと向かう仕組みになっている。

地元作家の藍染めなどを取り入れたミライ棟(ロコウェイ提供)

7月には各町内会長や関係者を招いた内覧会がレキシ棟で開かれ、元家主の梅澤紘治さん(79)ら家族も出席。梅澤さんは仕事の都合で新潟市との2拠点生活を送ってきたが「往復もきつくなり、先祖には申し訳ないけれど取り壊すしかないと思っていた。生まれ育った家の面影を残しつつ立派にしてもらった」と喜んでいた。

レキシ棟リビングで歓談する山﨑社長(右)と梅澤さん(左)ら

レキシ棟では地元酒販店が厳選した日本酒をウェルカムドリンクとして提供するサービスも行う。ロコウェイ代表取締役の田原哲さん(37)は「地域のさまざまなコンテンツを集めて地域自体を好きになってもらう。ファンを作るための機能としてこのホテルが存在するというモデルを作っていきたい」と意気込んでいる。

宿泊予約は各種ホテル予約サイトからできる。

oranchi.net

町宿「Oranchi」レキシ棟