上越に本格的なフランスパンを広めた「フランボワ」が閉店

上越で初めて本格的なフランスパンを広めた「フランボワ」(新潟県上越市本町5)が2019年5月31日、34年の歴史に幕を閉じた。午後1時すぎ、店主の高野守さん(58)が静かにシャッターを下ろした。

シャッターを下ろす店主の高野さん(午後1時すぎ)
フランボア2

前身の「高野パン」は初代の高野正一さんが1961年(昭和36年)に春日新田で創業。コンビニがまだない時代で、地域の商店などにパンを卸売していた。2代目の高野守さんは「店売りをやりたい」と、六本木や赤坂などで7年間修行し、1985年(昭和60年)4月7日、高田駅前の仲町4に焼き立てパンを販売する「フランボワ」をオープンした。その後、上越ワシントンホテル(現アートホテル)の開業に合わせ、1994年(平成6年)に儀明川に面した本町5に新築・移転オープンした。

当時、上越地域では生地から作った本格的なパンを販売する店は珍しく、中でも長時間発酵させた風味豊かなフランスパンは人気を呼んだ。バゲット、バタールなど5種類を並べた。3種類の食パンも「シンプルな味で、何も付けなくてもおいしい」と評判だった。菓子パン、調理パンも60種類ほどそろえた。

閉店日の5月31日午前10時すぎ。店内のパンはほとんど売り切れていた
フランボア閉店2

閉店は「健康上の理由」。手術で入院することになり、5月に入って閉店を決意した。店頭に閉店の張り紙を出さなかったのは「体に無理がきかず、予約分を焼くのが精いっぱいだった」ため。常連客に閉店を告げたところ、1週間ほど前から大勢の客が詰めかけ、午前中に売り切れる状態が続いていた。

常連客から花や手紙も贈られ、高野店主は「感謝の気持ちでいっぱい。長い間、お世話になりました」と話していた。

店内にはパンを焼く設備がそのまま残っている。「やりたい方がいれば格安で譲りたい。指導もできる」と話している。

フランボワ(上越市本町5)