「みんなのふれんち レルヒ」が再オープン いったい何が変わったのか?

2019年9月7日に突然“閉店”した新潟県上越市本町2の人気レストラン「みんなのふれんち レルヒ」が9月下旬、再オープンした。

新生「レルヒ」は何が変わったのか。オーナーシェフの江口直樹さん(31)に話を聞いた。

「みんなのふれんち レルヒ」の江口オーナー 江口さん

一問一答

心のリニューアル

——閉店時のインタビュー記事(一問一答)が波紋を呼んだ。「閉店する背景が分からない」「宣伝のためにタウンジャーナルを利用したのではないか」「宗教家なのではないか」など、さまざまな反応があった。

江口 私の方にも、いろんな意見が寄せられた。「意味がわからん店主だな」とか「記者が生意気だ」とか。

——微妙なニュアンスを伝えたくて、あえて一問一答形式で記事にした経緯がある。

江口 一般論からすると、閉店したことは、めちゃくちゃ外れたことをしているかもしれない。オープンの時に上越タウンジャーナル取材を受け、その記事にものすごい反響があった。だから、閉店のときもみんなに想いを伝えられると思って取材を受けた。こういう店があるんだということを、みんなに知ってほしかった。

当然ながら売上が減ることや、お客さんが減ることは分かっていた。再オープン後はお客さんが減ったけれど、今はすごく幸せ。やって良かったと思っている。店の採算よりも、“世界平和”などに興味を持つ人が増えてくれればうれしい。

——閉店の際の取材では、再開時期は未定と聞いていたが、約2週間で再オープンとなった。なぜそんなに早くできたのか。

江口 お客さんを待たせたくなかったという気持ちが強く、できる限り急いだ。2週間で開業までこぎつけたのは、すごく努力して頑張ったから。メニューもまだ定まっていないけど、とにかくお店を開けてお客さんを入れたかった。

——店構えや店内を見ても何も変わっていないし、いわゆるリニューアルとは違う。客観的に見ると単なる休業ではなかったのか。

江口 客観的に見ると休業かもしれないけれど、完全に閉店して、自分で後戻りできない状況を作った。いわば「心のリニューアル」。自分の中をしっかり入れ替えたかった。

「レルヒで学ぶ50の事」を決める

——「心のリニューアル」とは何か。具体的なものはあるのか。

江口 『レルヒで学ぶ50の事』というのを作った。これはすべて人の品格になるものであり、これを身につけたときに自信が持てて、本当の意味での個性が出る。

——ざっと読んでみると、「食べ物のありがたみを知る」「できない理由を先に出さない」「お祝いは自分のことのように祝う」「あいさつは相手の顔を見てする」「失敗を3秒以内に認める」「常に夢を思い描く」「見て見ぬふりをしない」「損得を考えない」「何のために生きているか考える癖をつける」……当たり前のようなことだが、なかなかできないだろう。

江口 まったくできない人は、やっぱりいると思う。でも、この中の一つでもできれば、50あってもできるはず。達成を7段階に分け、いくつできたらバッジをあげたりするマイスター制度みたいなものにしたい。

それは最終的に、持続可能な開発目標(SDGs)という国連が定めた17の国際目標につなげたい。その組織に入るとかではなく、少しでも貢献できたらと思う。そういう人たちがいるということが、自分はすごく勇気づけられている。

——それをこの店から始めて、世界平和につなげたいということか。

江口 それは絶対につながる(2回繰り返す)。

料理よりも“人づくり”から

——再スタートは“人づくり”から、ということか。

江口 料理よりも人づくり。これができるようになれば、料理は絶対においしくなる。

——(イエローハットの創業者)鍵山秀三郎さんのようにトイレ掃除から社風を変えていった人がいるが、同じようなことに思える。

江口 それは基本中の基本。うちもトイレ掃除から花の水やりまで徹底してやっている。

——料理よりも大事なことがある、と。

江口 昔は今と逆のことをやっていた。従業員を後回しにして、“料理が一番だ”といってやっていたことがあるので、人がいなくなって大変な苦労をした。一人で料理を作ってホールもやったことがある。要は人のせいにしていた。ずっと。

——新潟でレストランの店長をやっていた頃の話か。

江口 そう。これじゃいけないと、今は逆のことをやっている。今回のことと新潟のことが合わさって、今がある。

——“人”が料理を作るということだろうか。

江口 料理は面白いくらい、自分の心境が表れてしまう。お客さんにたいへん失礼だが、閉店前にはとても料理を出せる心境ではなかった

——ディナーのメニューが一部変わったようだが、メニューは今後どうなるのか。

江口 まだ全然、できていない。料理や飲み物は、これから少しずつ変えていく。

——これからのレルヒに期待したい。

江口 はい。

2週間の閉店中、店の裏庭に江口シェフが作ったテラス席 テラス席

◇「みんなのふれんち レルヒ」公式サイト http://lerch.site/

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