築150年の古民家を生かした新潟県上越市本町2の人気レストラン「みんなのふれんち レルヒ」が2019年9月7日、閉店する。8月27日に同店の公式ブログで突然閉店が発表され、「人気店がなぜ?」「何が起きたのか」と波紋を呼んでいる。
「夢を成し遂げたい」のタイトルで発表された閉店のお知らせの要点は次の通り。
- 世界中の困っている人の助けになるという夢を成し遂げたい。
- 自分が思い描く夢と、自分の行動がまったく違う。
- 心から「ありがとうございます」と言えない状況で経営が成り立っているのが情けない。
オーナーシェフの江口直樹さん(31)に真意を聞いた。
一問一答
——閉店理由が抽象的で分かりづらい。夢を実現するため、2018年2月に開店したのではなかったか。
江口 だんだん夢からそれていって、自分の成長が止まった。もっと自分を磨きたい。自分がこうなりたいというのが実現できなくなった。自分の最終的な願いは、世界中の困っている人たちに寄付すること。
——それだったらこの店で儲けて、一部を寄付すればいいのでは。
江口 それ(夢)は一人じゃできない。レストランを通して、ボランティア活動をしていきたかった。ここで働いているみんなが一丸となってその方向に向かって進み、接客や料理を通じて伝えていきたかった。それが完全にそれてしまい、後戻りができなかった。
——経営者と従業員の立場は違うし、それは無理ではないか。
江口 でも、その無理を可能にしたかった。考えて、考えて、それができる仕組みを作りたい。
——再スタートしたいということか。それはこの場所なのか。
江口 同じ場所で、店名もおそらく同じ。料理を提供するというスタイルも同じで、やることは一緒。
——いったん店を閉じないとリセットできないのか。
江口 閉店するのは、閉店にした理由をみんなに知ってもらいたかったから。休業ではだめだった。ブログに書いた内容は抽象的に捉えられてしまうけれど、まさにそのまま。説明のしようがない。
——周囲に反対されなかったか。
江口 反対しかされなかった。生きていて意味ないな、と思っちゃって。やりたいことができずに辛かった。お金じゃない。
——店は今でも予約が取りづらい状況が続き、商売としてはすごく順調。経営が順調で悩むというのは聞いたことがない。
江口 こんな気持ちで料理を作っていては、お客さんに申し訳ない。
——客が求めているものと、オーナーが求めているもののギャップがあったのか。
江口 それはない。自分が求めているものは、お客さんが求めているものと同じはず。
——世界中の困っている人を助けたいとして、店を出す経営者も珍しいが。
江口 だから伝わりにくい。でも、それが本当にしたくて。それがこのまま経営していてはできない。いったん、店を解散して閉めるしか方法がない。
——繰り返すが、困っている人に寄付するのだったら、売上の一部を寄付するのではだめなのか。
江口 それは全然違う。お金だけではない。自分が成長することが大前提で、そのためには料理に限らず多店舗展開して、人を育て、いろいろな人が関わっていくようにしたい。
——2018年2月に出店する際、「本町通りを活性化させたい」と言っていたが、それは変わらないか。
江口 もちろん。(閉店を通じ)こういうことを考えている人がいるということを、町の人に伝えたかった。例えば、道に落ちているごみを自分一人が拾っても世界は変わらないが、一人ひとりがごみを拾い始めれば、間違いなく町は変わっていく。
——再開までブランクはあるのか。
江口 なるべく急ぎたい。
——客の立場からすると、また同じものが食べられるということか。
江口 そうです。
——では、レルヒが再開した際には、またお話を伺いたい。
江口 はい。
=終わり=