上越出身の山岸教授 老化防止の研究を本に

新潟県上越市出身で久留米大医学部教授の山岸昌一氏(49)が2012年6月、老化の原因となる物質「AGE(エージーイー)」について一般向けに書いた本邦初の本「老けたくなければファーストフードを食べるな」(PHP新書)を発刊した。最新の研究をもとに、AGEを体にためない生活習慣や調理法、治療の最前線などを紹介している。

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センセーショナルなタイトルの本だが、山岸氏は糖尿病と循環器の名医として知られる。老化の原因物質として注目されているAGEに関する英語論文を400編以上発表し、AGEの研究で日本糖尿病学会リリー賞、アメリカ心臓病協会基礎科学部門最優秀賞を受賞している最先端の研究者。学術的な研究の裏付けがない健康法の本とは一線を画す。

上越市出身の山岸昌一氏
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山岸氏は1963年に上越市で生まれたが、子供のころから体が弱く入院を繰り返し、高田高校を4年かかって卒業。療養を強いられたことから医者という職業を選択し、20歳のときに金沢大学医学部に入学した。その後、米国ニューヨークのアルバート・アインシュタイン医科大学研究員などを経て、現在久留米大医学部教授。医学博士。

専門書はこれまでに2冊発刊しているが、本書はNHK総合テレビの健康番組への出演を縁に、一般の人にAGEについて広く知ってもらおうと書き上げた。AGEについて分かりやすく書かれた本は初めて。発刊直後に人気番組「たけしのみんなの家庭の医学」に出演したこともあり、約1か月で3刷を重ね、現在の発行部数は2万2000部を突破している。

山岸氏は「特定の食品をやり玉に上げているのではなく、AGEを意識して日常生活を送ることにより、自立した若々しい人生を送ることができる。ファーストフードも程度問題で、要するにバランスが重要。20~30年前の日本人の食生活に戻すことが重要ではないか」と話している。

本書の内容の概略は次の通り(AGEを抑える薬や治療の最前線など後半部分は省略)。PHP研究所刊、新書版、222ページ、780円。

 老化の原因とされるAGEは体の中のタンパク質が糖化され変質した最終産物で、代謝されず体の中に蓄積する。血糖値が高いほどタンパク質と糖がくっついたAGEが作られやすく、高血糖にさらされる時間が長いほど進行する。さまざまな病気をもたらす糖尿病は、常に血糖値が高い状態なので「老化の縮図」だといえる。

最近の研究で、AGEが体に溜まることで、心筋梗塞や脳梗塞の原因となる動脈硬化が進行したり、アルツハイマー病、骨粗鬆症、がんなどがおこることが分かってきた。

糖尿病の原因の一つに運動不足や過食による肥満があるが、人間の体の遺伝子は常に飢餓状態だった原始時代から変わっておらず、食べ過ぎて血糖値が上がる状態に弱い。また、貴重な塩分を体に取り込んだら蓄える仕組みなので、血圧が上がりやすい。止血剤がなく輸血もできない時代、動物に襲われて出血しても命を失わないよう、血液は凝固しやすい仕組みだ。これが動脈硬化や脳梗塞などの血栓症の病気が多い理由である。

AGEの摂取を少なくするには、焼いたり油で揚げたものをなるべ避け、生に近い状態で食べる方が良い。例えば鶏肉は唐揚げにすると水炊きの10倍AGEが高くなる。また、食事の量を腹七分目、八分目にすると、体に取り込むAGEの総量を減らすことができる。清涼飲料水に含まれる果糖は、ブドウ糖と比べてAGEを作るスピードが10倍になる。中でもポテトチップと清涼飲料水の組み合わせが最悪である。

◇山岸昌一教授の公式サイト
http://www2.ktarn.or.jp/~syamagishi/