文芸たかだ井東汎賞-規定違反で賞を取り消し

文芸誌を発行している新潟県上越市の高田文化協会(藤林陽三会長)は、2012年度の「第26回文芸たかだ・井東汎賞」で佳作となった長野県長野市の男性が書いた小説「鈴木伍長の最後」が、過去に複数の同人誌に掲載された作品ということが分かったため2012年6月29日、応募要項に違反するとして賞を取り消した。男性は求めに応じ、賞状と金一封を返還した。

文芸たかだに掲載された「鈴木伍長の最後」
bungeitakada

本年度は11編の応募があったが正賞はなく、2編が佳作に選ばれた。賞が取り消されたのは、長野市の山本直哉さん(76)が書いた「鈴木伍長の最後」。第2次世界大戦後、ソ連軍の捕虜収容所に囚われた主人公と元関東軍の伍長との日常を描いたフィクションだが、同じ内容でタイトルが異なる作品が全国的な同人誌「コスモス文学」の短編小説部門で、2009年2月に新人賞を受賞していた。また長野県の同人誌「文芸誌O」の第38号(2006年5月発行)にも、まったく同じタイトルと内容で掲載されていた。

同賞の応募要項には「創作(未発表の作品、あるいは『文芸たかだ』に過去1年間に掲載済みの作品)」という規定が明記されており、これに違反することから協議の結果、賞を取り消した。

授賞式は6月23日夜、同協会の総会の席上で行われ、山本さんは「このような賞を続けてこられた高田の文化の程度の高さをひしひしと感じている。私のような長野の者が(賞を)いただくのは面映い」などと受賞の喜びを述べていた。

【文芸たかだ・井東汎賞】
 高田文化協会が発行している「文芸たかだ」の初代編集長、田中武のペンネームを付して1983年(昭和58年)に創設した文学賞。新人の発掘、地方文芸発展のため、会員にかぎらず広く一般からも公募している。

◇高田文化協会公式サイト
http://takadabunka.com/