10月末で104年の歴史に幕 上越市本町1の食堂「平方屋」

新潟県上越市本町1の老舗食堂「平方屋」が2019年10月31日の営業を最後に、104年続いたのれんを下ろす。店主の平山秀雄さん(70)は「平方屋の味を気に入って通っていただいたお客さんに、感謝の気持ちでいっぱい」と話している。

10月31日でのれんを下ろす「平方屋」
のれん

「売上が落ちたこともあるが、妻(恵子さん)が大病を患い、無理がきかなくなった」と話す。今年8月に閉店を決意し、9月中旬に常連客へ閉店のはがきを出すとともに、入り口に告知を張り出した。閉店を惜しむ客が次第に増え、入店を断るほどの混雑が連日続いている。

三代目店主の平山秀雄さん
店内

創業は1915年(大正4年)。白根市(現新潟市南区)生まれの初代、平山政治さんが、団子やトコロテンなどを座敷で提供する飲食店として創業。店名は故郷の「平潟新田」から名付けた。二代目の重太郎さんは、そばやうどんの店として繁盛させ、三代目を継いだ秀雄さんは長野市の中華料理店で修行し、メニューにラーメンなどの中華料理を加えた。

そばやうどんだけではなく、ラーメンも自家製麺のため、麺類の人気が高い。あんかけ焼きそば、味噌煮かけそば、鍋焼きうどん、タンメン、もやしラーメン、うま煮ラーメンなどが人気だが、客によってそれぞれ好みがあるという。

萬年家(大町4)、玉屋(仲町4)、三国屋(仲町3)、いづみや食堂(本町5)など、創業100年を超える老舗が次々と閉店し、「いつの間にか、古い方の店になった」と苦笑いする。「戦後のベビーブームもあり、お昼は出前を取って食べる人も多かったが、今はコンビニで何でも売っている。宴会を受けていた昭和50年代が、一番良い時代だった」と振り返った。

1994年の映画「男はつらいよ 拝啓車寅次郎様」で、同店が主演の渥美清さんら俳優の休憩に使われた。渥美さんが亡くなる2年前のことで、出番直前まで横になっており、昼食のたぬきそばも口を付けただけという。店内にサインが飾ってあり、「いい思い出になった」と話す。

長男の健治さんが同店2階でイタリア料理店「Pacco(パッコ)」を営んでおり、11月中にランチ営業を始める予定。

平方屋