上越市立小学校で起きた低学年児童の給食アレルギー事故で、市教委はアナフィラキシーショックとした医師の診断を保護者から伝えられ公表を求められていたにもかかわらず、公表しなかったことが2024年9月17日までに、上越タウンジャーナルの取材でわかった。また、保護者が駆けつけた際、学校側は安静にすべき発症後の児童を玄関まで歩かせ出迎えさせていたことも新たにわかった。市教委は原因物質の皮膚への接触が原因と発表したが、アレルギー専門医である主治医が児童の皮膚に卵を付着させ検証を行った結果、症状は出ず、接触ではアナフィラキシーは起きないと結論付けた。今回の事故について市教委の発表の正確性が問われる事態となっている。
アレルギー専門医が検証 市教委発表と反する結果に
児童は重度の卵アレルギーで、市教委の発表では、卵成分を除いた給食を食べ終わった後、手を洗いに行って教室に戻ったら、同級生のかきたま汁の食器などが自席に置いてあり、左肘が食器に触れたとしている。市教委は肘の接触が原因と推定しており、誤食事故ではないと発表した。
市教委の発表に疑問を感じたアレルギー専門医の主治医は、当日の給食を再現したかきたま汁から、卵の部分を集め、塊を児童の皮膚に付着させる負荷試験を行った。その結果、皮膚には赤みすら出ず、症状は現れなかった。主治医はこの児童の場合、皮膚への付着でアナフィラキシーは起きないと結論付けた。
保護者も「これまでの経験からも、皮膚に付いただけではこうならない。なんらかの経緯で口から入ったとしか思えない」と話している。
診断「アナフィラキシー」 市教委 知っていたのに認めず発表せず
事故が起きたのは9日の給食の時間で、児童は救急搬送され入院した。市教委が事実を発表したのは11日の夜だった。
9日午後、搬送先の病院で入院する際に医師からもらった書類には病名として「アナフィラキシー」と記載されていた。この事実を保護者は病院で養護教諭に伝えている。
さらに11日午後、市教委の担当者が発表内容の確認のため保護者に面会した。その際、医師の書面について問われた保護者は担当者に病名を伝えてる。さらに保護者は搬送先の医師から「重篤なアナフィラキシーショックで、あと少し遅ければ命の危険があった」と言われたことを伝え、発表内容に盛り込むよう求めた。市教委の担当者はこの時点では「わかりました」と承諾していた。
しかし、11日夜の市教委の発表にはこうした保護者が求めたことは反映されなかった。発表文には単に「アレルギー症状」と記載され、症状の軽重への言及もなく、報道機関の取材に市教委は「重篤な状態ではなかった」と答えていた。
安静にすべき児童を玄関まで歩かせる
児童がかきたま汁の食器に接触したのは9日午後0時55分頃。午後1時15分頃に学校が保護者に電話連絡した時点で、児童は保健室にいて首のかゆみを訴えていた。
保護者が学校に駆けつけたのは午後2時10分頃で、その際、児童は校長、養護教諭、担任と一緒に、学校の玄関に出て立って出迎えていた。
上越市のマニュアルでは、かゆみなどの症状がある場合は、内服薬を飲ませるか安静にして症状を観察するとされているが、この時点でかゆみを訴えていた児童に学校側は内服薬を飲ませていない。さらに、安静にすべきにもかかわらず、玄関まで歩かせて出迎えさせている。
このわずか20分後、腹痛や声のかすれの症状が出て保護者がエピペンを注射している。
市教委「取材に応じられない」
今回の事故をめぐって市教委は11日、学校が一定程度適切に対応したという内容を報道発表したが、実際は市のマニュアルを事実上無視した対応だったことがわかっている。
今回新たに判明した事実について市教委は「現在当時の状況を確認、検証中であり、答えられることはなく、取材には応じられない」としている。