1911年(明治44年)建築で、現存する日本最古級の現役映画館である新潟県上越市本町6の「高田世界館」が、2026年2月末まで休館し大規模修繕を行っている。明治期の建物を残そうと、同館はこれまで何度も改修を行ってきたが、今回は115年前の開館以来初めて、シンボルでもあるしっくいの天井装飾を修繕した。

しっくいの天井装飾にひび
芝居小屋「高田座」として開館した同館は、大正期に映画館となり、時代と共に名称を変えながら営業を続けてきた。同市を代表する歴史的建造物で国の登録有形文化財や近代化産業遺産に指定されている。2009年に前オーナーからNPO法人「街なか映画館再生委員会」が建物を引き継いでからは、屋根や外壁、客席などを段階的に修繕してきた。

「令和の大改修」に位置付ける今回の大規模修繕では、壁や柱のひび割れや傷みを補修するほか、経年劣化によるわずかな傾きやひび割れ、固定具の外れが確認された天井装飾を特別な工法で修繕した。同館を象徴する意匠でもある天井装飾は、縦約2m、横約2mの八角形の枠の中に、明治維新まで約130年間にわたって高田藩を治めた榊原家の家紋「源氏車」が、しっくいで立体的に施されている。中央にはシャンデリアが設置されていたと思われる金具も残る。

修繕には特別な工法を採用
修繕では、歴史を刻んできたしっくいの外観を残すため、外側からの補修は最低限にとどめ、天井裏の裏側からの作業で強度や安全性を向上させた。工学院大学建築学部・田村雅紀教授の研究室の独自技術を採用した。田村教授の研究室は、同館と同じ年に建設された国の重要文化財「岩手銀行赤レンガ館」(岩手県盛岡市)のしっくい天井の復原改修工事に携わった実績がある。

1月27〜29日には田村教授の指揮で天井裏に作業員が上がり、天井装飾の裏側からしっくいと樹脂を混ぜた補修材を塗っていった。

同館の天井装飾は、等間隔に並べられた細い木材の隙間に外側から塗ったしっくいが食い込んで引っ掛かることで全体を支える「木摺(ず)り」と言われる工法で作られている。田村教授によると、補修材を天井裏から塗ることで引っ掛かりの強度を高めるほか、木摺りの木材に小さな穴を複数開けて細い麻縄を接着剤で固め、天井裏の固定具に麻縄を結ぶことで装飾の落下を防ぐという。

シンボルは次の世代へ
田村教授は「天井装飾の安全性はかなり高まった。映画館として100年以上、いろんな人が足を運び、目に触れてきたものなので、さらに使い続けることができるようになり、専門家として関われてありがたい」と話した。
同館支配人の上野迪音さん(38)は「初めて天井裏に上がり、115年前の建築当時の様子を感じて興奮した。高田世界館は市民みんなが受け継いできたもので、50年後など次の改修に向けて、さらに市民と一緒に支えていけたら」と話していた。
修繕費の寄付募る
大規模修繕の費用約630万円のうち、市の補助金を除いた158万円は自己負担で、同館は寄付を募っている。1万円を超える寄付者の名前は修繕した天井裏の空間に記載する予定。またオリジナルグッズがもらえる「記念品コース」もあり、支援を呼び掛けている。
2月19日修繕工事の解説イベント
修繕工事による休館は2月27日までの予定。開館直前のプレイベントとして、2月19日午後2時から、田村教授が工事の解説や修繕の意義などについて語るイベントを開催する。修繕工事の様子を撮影した映像や江戸末期、市中引き回しで刑場へ送られる罪人と彼を護送する与力の駆け引きを描いた時代劇の短編映画「引かれし者の小唄」の上映もある。入場無料。
