能登半島地震で津波による浸水被害があった新潟県上越市の港町1・2丁目町内会は2024年5月19日、津波を想定した避難訓練を行った。被災後初めての実施で、徒歩での避難が難しい高齢者などの車を使った避難も実験的に行った。
関川河口近くの港町1では、関川を遡上(そじょう)した津波が堤防を越えて住宅地に流れ込み、住宅15棟の浸水被害が確認されている。
町内では緊急の避難場所が6か所定められているが、指定避難所の旧市立古城小学校に避難が集中。徒歩が原則とされる中、町内で実施したアンケートでは避難した約7割が車移動だったことが明らかになり、古城小でも駐車場に車があふれ、避難に時間がかかるなど混乱があった。
訓練は例年秋に行われるが、元日の避難経験を踏まえ、改めて住民に避難行動を確認してもらおうと時期を早めた。また、体が不自由などの理由で避難できなかった世帯もあり、車の活用も今後検討しようと実験的に取り入れた。
午前9時に上越沖を震源とする震度6強の地震が発生し、15分後に津波が到達する想定で行われた。住民たちは非常用持ち出し袋などを手に、徒歩で最寄りの避難場所に向かった。車は古城小に限定し、12台が避難。混雑を避けるためグラウンドを駐車場として開放した。高層階に向かう時間も考慮し、避難所への到着は地震発生から10分以内を目標とし、参加した162人のうち、約7割の112人が達成できた。
港町1の女性(73)は小中学生の孫2人と近くに住む年上の女性を連れて車で避難した。「足が悪く避難所の階段を上るのでやっとなので、近くまで車で来れるとスムーズだった。徒歩だったら間に合っていないと思う」と話していた。
能登半島地震を受け、市は原則徒歩としていた津波の避難方法に、避難行動要支援者などに限り、車での避難も選択肢に加える方針を示している。町内会では今後訓練の結果をまとめ、撮影した動画からも避難行動を見直し、車の活用についても検討する。
港町防災対策委員会の泉秀夫委員長(82)は「全員が助かるのが一番重要。避難場所、ルート、避難時間の把握を繰り返しやるしかない。車でないと逃げられない人がいる事実もはっきりしたので、今後議論したい」と述べた。