津波避難は要支援者などに限り車使用も可能に 上越市が方針示す

新潟県上越市は能登半島地震を受け、原則徒歩としていた津波の避難方法に、避難行動要支援者などに限り、車での避難も選択肢に加える方針を決めた。津波被害があった直江津地区を対象に2024年5月15日から開いている住民ワークショップで示され、各町内ごとに地域別避難行動計画の見直しや、車の活用の必要性など検討を進めている。

市が津波避難の方針を示した住民ワークショップ

元日の地震では、多くの人が車で移動し幹線道路が渋滞したほか、高齢者など要支援者の避難に時間がかかっていたことや、避難しなかった人がいるなどの課題があり、市が車を使った避難を検討していた。

市が示した方針では、津波警報などの発表時は引き続き「原則、徒歩による避難」とし、加えて浸水想定区域内の避難行動要支援者などに限り「自動車による避難を選択肢の一つとする」とした。避難場所は浸水想定区域外のスーパーや事業所などの民間駐車場とし、道路が寸断されることも想定して避難場所と避難経路を複数選定。また一人の要支援者に複数の支援者を指定することで、担当する住民の不在時にも対応できるようにする。

自動車による避難のイメージ(上越市提供)

ワークショップは今回の避難経験を踏まえ、改めて避難方法や経路を見直し、車の活用の必要性も検討するため、全22町内が4日に分かれて開かれた。2日目の16日には6町内から町内会長や防災士、民生委員ら16人が参加。各町内ごとに市危機管理課の職員も入り、避難時に実際に使った経路や危険箇所を地図で確認したほか、車の活用が有効か話し合った。

津波の到達が確認された船見公園近くの天王町町内会長(72)は「選択肢が増えたのはいいことだが、要支援者の中でも車を使う人と使わない人の線引きが難しい」。塩浜町町内会長(71)は「今回のように正月で酒を飲んでいたら車が出せないなど、(発災の)時期と時間帯によってうまく利用できるかが課題。道が狭く一方通行も多いので、徒歩を基本に検討する」と慎重な意見が目立った。

地域別避難行動計画を見直す住民と市職員

また住民からは、方針はもっと町内と議論を重ねてから決めるべきといった意見や、車を使う要支援者の選定には市職員も入ってほしいといった要望、浸水想定区域外でも建物倒壊などで車避難が必要な場合があるなどの指摘もあった。

市は今後もワークショップを重ね、必要な地域は車での避難経路や場所の選定など具体化していく。10月には直江津地区を会場に地震と津波を想定した市総合防災訓練を実施し、見直した行動計画を検証するとしている。

岩崎健治危機管理課長は「住民の方の考えがよく分かったので、それを踏まえて対策を考え共有していきたい。要支援者と支援者のマッチングなど町内の負担もあるので、福祉課とも連携してスムーズにできるよう検討していきたい」と話した。