直江津の海で寝かした酒「まろやか」に 海底熟成した日本酒やワインの試飲会 

直江津港の水深約15mの海底で5か月間熟成させた日本酒やワインの試飲会が2023年12月20日、新潟県上越市土橋のレストランで開かれた。生コンクリートの製造・販売を手がける上越建設工業(同市柿崎区)が生コン需要が低迷する中、新規事業として実証実験を行ったもので、参加者からは「全体にまろやかになった」などと、評判は上々だった。

直江津港で海底熟成した日本酒やワインを試飲する渡邉雅之CEO

海底で酒を熟成させると、潮の流れなどによる振動や海水温、暗さなどの影響で、地上とは違った味わいになると言われている。直江津港でのプロジェクトは県の支援を受けて取り組み、7月から12月までの5か月間、よしかわ杜氏の郷(同市吉川区)と高の井酒造(小千谷市)の日本酒9種類34本、上越産を含む国内外のワイン10種類18本、瓶入りの白米4本の計56本を直江津港の海底で熟成させた。

海底から引き上げた日本酒やワイン(上越建設工業提供)

試飲会には日本酒を提供した蔵元のほか、花角英世県知事や中川幹太市長など約30人が出席し、通常の保存状態のものと海底熟成したものを飲み比べた。

ワインサロンエルミタージュ(同市本町5)のシニアソムリエ、佐々木政光さんは「赤ワインの渋みがまろやかになり全体の調和がとれ、丸くなった。辛口の日本酒は全体的にまろやかさが感じられる」と講評。よしかわ杜氏の郷の谷内幹典製造・営業販売係長は「酒の種類によって、違いのあらわれ方に差があった。米をあまり精米していない酒は酸が丸くなり、飲みやすくなった」と話し、高の井酒造の山崎亮太郎社長は「猛暑で夏の海水温が高かったので心配していたが、大吟醸も特徴が出ておいしかった。イベントで終わらない、事業化の可能性を感じている」と期待を寄せた。

試飲会では通常の保存状態のものと海底熟成したものを飲み比べた

上越建設工業は運送会社マルソー(三条市)のグループ会社で、マルソー社長で同社の渡邉雅之最高経営責任者(CEO)は、「売り物になるのかと思ったが、予想以上の仕上がり。日本酒は全体にまろやかな味わいになり、酸味がおいしく際立ったワインもある」と県産酒類の新たな付加価値に自信を見せた。

ゆりかご式コンテナによる海底熟成の様子(上越建設工業提供)

12月からは冬期の海底熟成も実施中。冬の日本海の荒波で酒を揺らしながら熟成させようと、ケースをつり下げるゆりかご式のコンテナを開発し、県内産の日本酒とワイン計51本を5月下旬までの半年間熟成させる。「日本海荒波熟成」の商標登録も申請中という。また上越市の補助金を活用して、大量の酒の海底熟成を可能にする専用コンテナの製作を進めており、来年9月以降に海底熟成の開始を予定している。

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