新潟県上越市の直江津港で、海底に日本酒やワインを沈めて長期間寝かせる「海底熟成酒」のプロジェクトがスタートした。コンクリートの製造・販売を手がける上越建設工業(同市柿崎区)が実証実験に着手し、2023年7月3日、地酒やワインを直江津港西防波堤先端付近の海底に沈めた。
海底で酒を熟成させると、潮の流れなどによる振動や海水温、暗さなどで味がまろやかになると言われている。県内では今年、佐渡市の沖合で佐渡や福島の日本酒やワインを海底熟成している。
直江津港でのプロジェクトは、同社が新規事業として始めた。よしかわ杜氏の郷(同市吉川区)と高の井酒造(小千谷市)の日本酒34本、上越産を含む国内外のワイン18本の計52本に、白米を詰めた瓶4本の計56本(すべて720ml入り)を11月末まで約5か月間、海底熟成させる。
この日行われた貯蔵作業は、西防波堤入り口から約2.8kmの先端まで酒を車で運び、同社が製作した幅90cm、奥行き90cm、高さ70cmの鉄製の専用コンテナに入れ、クレーンで水深14mの海底に沈めた。専用コンテナの下部には同社の耐久性に優れたコンクリートの土台を付けるなど、従来の技術も活用した。
同社を含むマルソーグループ代表で中核企業のマルソー(三条市)の渡邉雅之社長は「建設不況の中、上越の海を生かして何か新しい事業ができないかとスタートした。母なる海がいい作用を起こすと期待している」と述べた。
柿崎区にはマルソーが所有する雪室の営業倉庫があり、海水温が上昇する夏は雪室で、冬は海底で熟成させることで付加価値を付けブランド力を高めたい考えだ。
酒は11月末に海底から引き上げ後、有識者による試飲会や専門機関での味覚分析を行い、事業化に向けた検討を進めるという。