上越市教育委員会は2023年10月30日、今年9月に市立小学校で起きた給食アレルギー事故の詳細について、市議会に報告し、記者会見した。学校の対応に問題はないという当初の説明から、一転して問題があったと正式に発表した。児童への対応に問題があったとする詳細な報告書が学校から届いていたにもかかわらず、教育委員会内部で部長や教育長に伝えられていなかったことにより、詳細の公表や検証などが後手に回ったという実態が明らかになった。11月から事故の検証を行い、有識者らの意見を入れた事故報告書を来年1月までに作成するとしている。
被害に遭った市立小学校児童は重度の牛乳アレルギーで、9月5日の給食のスープに使われた乳成分が見過ごされていた。市教委は当初、発症後の学校側の対応は市のマニュアルに沿っていて問題はなかったと発表していた。
事故の詳細を記した報告書は10月5日、学校から教育委員会の学校教育課長に送られていた。この報告書には、市教委の当初の見解に反して、発症後の児童を1人にしていたことや、アナフィラキシーショックを抑える自己注射薬「エピペン」の使用が遅れていたことなどマニュアルに反していた事実が記載されていた。
しかし、10月14日に上越タウンジャーナルなどが事故の詳細を報じるまで、中川幹太市長と2人の副市長に報告はなかった。教育委員会のトップである早川義裕教育長や教育部長が報告書の存在を知ったのは、報道の前日だった。
こうした重要な情報を報告しなかったことについて、学校教育課長は記者会見で「そのときは、今後の職員指導に生かさねばならないという認識はあったが、部長に報告するという考えが不足していた」と説明した。教育部長は「報告は速やかに行われなければいけない」、早川教育長は取材に対し「内部での情報のやり取りに課題があった。きちんと検証していきたい」と話した。
市教委は今後、事故防止策やアレルギー発症時の緊急時対応に加え、情報公開についても検証を行い、関係者や有識者の意見も踏まえた改善策をとりまとめた事故報告書を作成し、来年1月に公表するとしている。