早春のミズバショウで知られる新潟県妙高市池の平の「いもり池」では、6月下旬からスイレンが咲き始め、10月頃まで水面を覆い尽くす。スイレンは世界中で愛され、フランスの画家、クロード・モネが好んで描いたことでも知られる。湖畔でキャンバスを広げる画家や、カメラマンの格好の被写体にもなるが、昔を知る人からは「スイレンで水面が覆われ、逆さ妙高が見えなくなった」との声もある。それ以上に困ったことは、外来種のスイレンがはびこったため、ヒツジグサ、コウホネ、クロモ、オヒルムシロ、タヌキモなどの在来種が駆逐され、絶滅に追いやられてしまったことだ。
妙高高原町史(1986年発刊)には「浮葉植物ではオヒルムシロが多く、ヒツジグサも混生している。池の北縁には移植されたと思われるスイレンが勢力を増し、在来のヒツジグサを圧迫しているが、池の西側はヒツジグサだけでスイレンは分布していない。水中ではクロモがかなり多く生育し、オヒルムシロの水中葉も若干見られる」とある。近年はスイレンの勢いが増し、湖面の85%を覆うようになった。このため、在来種のヒツジグサは昨年まで数株あったが、今年は絶滅してしまった。
いもり池湖畔にある妙高高原ビジターセンターの春日良樹館長は「いもり池は自然の池ではなく、湿地を利用して人工的に作られた農業用のため池。ヨシを刈り取るなど、人が手入れをしないと景観を維持できない。スイレンはおそらく戦後に植えられたものとみられる。外来種なので毎年刈り取っているが、次第に増えてしまった」と話す。
スイレンを駆逐するには、池の水を落として地下茎を刈り取る必要がある。しかし、ミズバショウから紅葉まで楽しめる主要な観光地であり、夏は農業用水の需要があって、簡単に水を落とせない事情もある。
今年3月27日には新しく妙高戸隠連山国立公園として分離独立したばかり。いもり池のスイレンも大きな課題の一つになっている。