新潟県上越地方の山には多くの雪形が現れるが、6月に入ってから火打山(2462m)に現れるのが「種まきじいさん」である。2017年6月15日は朝から青空が広がり、山頂の直下に雪形がくっきり見えた。
深田久弥は名著「日本百名山」で、火打山を「こんな、一点の黒もなく真白になる山は、私の知る限り加賀の白山と火打山以外にはない」と表現する。
そんな白一色の気高い山も雪解けが進み、6月に入ってようやく現れる雪形が「種まきじいさん」である。上越地方の雪形では最も出現が遅い。
頭に菅笠をかぶり、両手で種をまく横向きの姿で、輪郭がくっきりして分かりやすい。旧新井市の伝承では「肩にふくべ(ひょうたん)を下げている」とも言われるが、ふくべは良く分からない。
雪形は、種まきなどの農作業の目安とされるが、出現が6月と遅いため、種まきができる野菜は少ない。ササゲや枝豆などの豆類、ゴマ、小松菜、ゴボウ、キュウリなどだろうか。