盲目の女性旅芸人「高田瞽女(ごぜ)」が共同生活をしていた、新潟県上越市東本町4の築約150年の町家が、2024年4月22日から解体されている。高田瞽女最後の親方、杉本キクイさんの住まいだった建物で、過去には瞽女ゆかりの地として見学会が開かれたこともあった。
建物は雁木通りに面し、奥まで細い土間が続く2階建ての町家。幕末生まれの高田瞽女の親方杉本マセの実家の向かいにあり、キクイさんまで3代の親方と弟子の瞽女たちが暮らした。1983年にキクイさんが亡くなり、残された養女のシズさん、弟子の難波コトミさんが養護盲老人ホーム「胎内やすらぎの家」(胎内市)に入所後は、新たな所有者の手に渡り、ここ3年ほどは空き家となっていた。
台所の手押しポンプや、妻折笠や杖を掛ける陶器のフック、目の見えない瞽女が手を置いた部分がすり減り退色した階段、2階の掛け軸など、瞽女たちが暮らした面影が多く残っていたが、老朽化が進み解体されることになった。
曽祖父とマセさんがきょうだいで、向かいに住む杉本正彦さん(82)は「入り口の格子戸に来客用に豆電球が一つ灯っていて、目が見えないけれど何がどこにしまってあるか分かっていた」とキクイさんら瞽女の暮らしを懐かしんだ。
瞽女ミュージアム高田(上越市東本町5)を運営するNPO法人「高田瞽女の文化を保存・発信する会」の小川善司事務局長(75)は、「ミュージアムの第2資料館として保存を検討したこともあったが残念。標柱などを立てることができれば」と話した。
瞽女に関する資料は市立歴史博物館と同ミュージアムで保存しているという。
杉本家があった場所