新潟県上越市のJMAXシアターで上映中の映画「海よりもまだ深く」は、「海街diary」「そして父になる」で知られる是枝裕和監督の最新作。映画後半で、台風の夜に団地から抜け出した良多(阿部寛)と息子・真悟が公園のタコ形滑り台の中で語り合うシーンが印象的だ。
そういえば、上越市内にも、同じようなタコ形の滑り台があったな……。
写真で比較すると、ほぼ同じ形だが細部の形状が違う。住民に聞くと、どれも40年ほど前に設置されたという。タコ形滑り台は公園のシンボルになっていて、子供たちに「タコ公園」などと呼ばれている。
調べてみると、この遊具は前田環境美術株式会社(本社・東京都)が製作したもので、全国的には「タコ山」「タコ滑り台」「タコスライダー」と呼ばれている。
前身の前田野外美術株式会社が開発し、1960年代後半から日本全国の公園に設置された遊具である。当初は彫刻科出身の若手デザイナーが児童の想像力をかきたてようと、あえて不可解な形状にデザインしたが、売り込み先の区役所に理解されず、頭を付けてタコの形にするように言われたというエピソードがある。
タコ形遊具となって公園に設置されてからは子供たちの人気を集め、1970年ごろからブームのようになって全国に約400基が作られたらしい。メーカーに記録がなく、正確な数は把握されていない。
上越市都市整備課公園管理係によると、タコ形の滑り台は上越市内に4基あり、1975年から1979年にかけて作られた。剥離や地割れなども生じているが、随時点検し、修繕などの措置をとっているという。
建設から既に40年前後が経過し、老朽化などで全国的に姿を消しつつある。映画撮影に使われたタコ形滑り台(東京・清瀬市)は昨年末に取り壊されたという。
◇前田環境美術の公式サイト
http://www.e-maeda.co.jp/