新潟県上越市本町3の「いわしや薬局」が2021年11月から、店内で駄菓子販売を始めた。粉ジュースや「モロッコヨーグル」「リングキャンディ」など、薬とは異なる甘い駄菓子が所狭しと並ぶ。
いわしや薬局を営む町田家は、元は明治維新まで高田を治めた高田藩主・榊原家に仕える武士で、江戸中期に初代藩主政永の国替えと共に姫路から高田に移り、旅籠屋を創業。1889年(明治22年)に当主が薬剤師免許を取得し、頸城地方初の近代薬局として開業した老舗だ。
駄菓子販売は、かつて取り扱っていた化粧品コーナーの空きスペースの活用を考える中で、同店の町田安彦さん(54)が子供の頃に毎日通った「駄菓子屋」の思い出から発案した。
ファンデーションなどを入れていた透明のアクリルの引き出しには「うまい棒」を味別に入れ、口紅やマスカラが並んでいた鏡付きの棚には「駄菓子」と書いた紙を貼り、1個10円の「ベースボールチョコ」や「サッカーボールチョコ」を置いた。薬局で販売している栄養ドリンク「リポビタンD」の屋根付き販促材も使って駄菓子屋の雰囲気を演出。買ってすぐに座って食べられるように、店内にあったソファも移動した。10〜30円を中心に、最初は60種類から始め今は約80種類にまで増え、商品は随時入れ替えている。
市内には1960年代(昭和40年代)まではあちこちに昔ながらの駄菓子店があったが、近年は閉店が相次ぎ、2014年に大町3の「清水商店」が駄菓子販売を終了したのを最後に姿を消している。
「思ったより好評」と町田さん。本町通りには子供が少なく、今は薬局を訪れる50代以上の人が「懐かしいね」と話し、購入していくことが多いという。人気商品は「むぎチョコ」や「きなこ棒」「ヤングドーナツ」「ビッグカツ」など。高齢者には「黒棒」や麩菓子、子供には「スーパーボール」や「サッカースクラッチくじ」も好評。酒のつまみ用に「焼たら」や「蒲焼さん太郎」を買っていく人もいる。
町田さんは「駄菓子販売の収支はトントンか少し赤字くらい。でも本町商店街が少しでもにぎやかになれば。小学生や中高生など若い人にも来てほしいですね」と話している。
営業時間は午前8時30分〜午後6時30分。日曜、祝日定休。