新潟県上越市大和2の大和神社にある樹齢350年を超える大ケヤキ。地域住民が観光資源として活用を進めている中、神社西側の県道沿いにドラッグストアが出店し、どの角度から見てもケヤキの背景に真っ赤な看板が入り込むようになった。「景観が損なわれる」と住民側が企業に要請したところ、企業も理解を示し、神社から看板が見えないようパネルを設置するなど追加の工事をすることで決着した。
地元は観光資源としてPR
大ケヤキは高さ27m、幹周り6.6mの巨木。2015年の北陸新幹線開業を機に地元有志で作る「上越妙高駅と共に歩む会」(石平春彦会長)が樹齢調査や樹勢回復、立地環境の整備などを行い、新幹線駅に近接した観光スポットやパワースポットとしてピーアールを続けている。
緑色の景観に赤色が…
「緑色の景観の中で、赤色がけばけばしい」──。石平会長は9月11日、工事中の「クスリのアオキ上越大和店」の覆いが外された際、看板に気づいた。神社の境内でケヤキに向かって正面、右、左、どの位置から見ても、今泉城跡の土塁とケヤキの枝葉の間に店舗の真っ赤な看板がちょうど入ってしまう。
すぐにアオキ本社に連絡して是正を求めるとともに、市当局にも対応を要請。石平会長は、大和2の町内会長でもあり、21町内で作る和田地区町内会長会(笠原完治会長)や大和神社と連携して、アオキとの折衝を続けた。
企業側も景観に理解
その結果、アオキ側も地元の取り組みや景観などついて理解を示し、最終的に店舗敷地内の県道側に、神社から看板が見えないようにするための目隠しパネルを設置することで合意した。10月29日に地元の4団体とアオキが合意文書を交わした。目隠しパネルは高さ6m、幅11.6mで、設置には、電柱の移設工事などで多額の費用を伴うが、アオキがすべて負担し、来春頃に完了する予定だ。
石平会長は「地域の団体が連携して広範囲な取り組みを展開したことが功を奏した。互いに理解し前に進むことができた」としたと評価したうえで、「進出企業も悪意でやったわけでなく、地域資産などにアクセスできず意思疎通ができなかったことは、市の景観行政の不十分性に起因している」と行政の景観政策の問題を指摘した。和田地区町内会長会の笠原会長も「地元の熱意が企業に通じた。また、企業もそれに応えてくれた」とアオキの対応を称賛し「今後も大ケヤキの保存活用に取り組んでいきたい」と話した。