新潟県上越市の上越教育大学付属小で長年使用されていなかった世界的ピアノメーカー「スタインウェイ」の94年前のグランドピアノがこのほど、県外での11か月間の修理を終えて同校に戻った。修理費用の寄付の呼びかけには目標の倍以上の約470万円が寄せられ、ピアノは見事よみがえった。2021年10月1日に同校で開催される開校40周年記念式典でお披露目され、再び名器の音色を響かせる。
スタインウェイ&サンズは、ベーゼンドルファー、ベヒシュタインと並ぶ世界最高峰のピアノブランド。同校のスタインウェイピアノは、長年多目的ホールに置かれたまま、その価値も忘れられ老朽化していた。昨年、戦前の1927年(昭和9年)に製造され、同校の前身が付属校だった高田師範学校から引き継がれたものと分かった。
同校の歴史を見守ってきたピアノをよみがえらせようと、同校PTAが復活計画「音故知新プロジェクト」をスタート。修理費用約350万円のうち200万円の寄付を募ったところ、卒業生や市民など357人から約470万円が寄せられ、修理はすべて寄付で賄うことができた。
トラックの荷台から降ろされ慎重に校舎に運び込まれるスタインウェイピアノ
9月21日、トラックの荷台から降ろされたスタインウェイピアノは体育館のステージに設置された。修理前は音は鳴るものの一部の塗装が剥がれ、脚の強度が弱まりビールケースで支えていたが、塗装を塗り直し、新たな部品によって脚も補強された。譜面台の透かし彫りも新品同様に黒光りし、大屋根を開けると、黄金色の金属製のフレームには竪琴の中に「&」の文字が入るスタインウェイのロゴマークもしっかりと見える。
フレームに刻印されている「スタインウェイ&サンズ」の竪琴のロゴマーク
山之内知行教頭は「多くの市民から協力をいただき、付属小への熱い思いや期待を感じた。ピアノが戻ってきて、改めて素晴らしいものであることを実感した。子どもたちに夢や希望を与えてくれる機会となった」と語った。
記念式典では代表児童6人によるピアノ復活コンサートが開かれ、同日のポプラ音楽祭でも児童がピアノを演奏する。年内には、校内にミニステージを設置した「ストリートピアノコーナー」の開設を予定している。新型コロナの収束後は、市民にも立ち寄ってもらうことも検討していくという。
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