来年のえとにちなんだ“モフモフ”毛並みのウサギを制作 妙高市平丸地域で伝統のスゲ細工 

新潟県妙高市の平丸地域に伝わるスゲ細工。例年、翌年のえとにちなんだ置物の制作が行われており、今年は来年のえと「卯」にちなみ、ウサギをかたどったかわいらしい作品が仕上がっている。

制作するのは「NPO法人平丸スゲ細工保存会」(柴野美佐代理事長)。地域の高齢化などから次第にスゲ細工が無くなっていく現実を知った柴野理事長(60)らが伝統を継承するため、保存会を2015年に立ち上げた。

来年のえと「卯」にちなみウサギをかたどった作品

山あいにある雪深い同地域では、1958年から冬期間の収入源としてスゲ細工が盛んに行われていた。最盛期は約230世帯あった集落で200人ほどが携わっていたという。時代の流れとともにスゲ細工の需要が減少したが、同NPOが地域のスゲ細工名人から制作を学んで引き継ぎ、現在はえとにちなんだ作品を毎年制作販売しているほか、上越市板倉区に「スゲ細工資料館」をオープンさせるなど伝統の火を灯し続けている。

現在制作中のウサギは今年9月頃から作業に取り組んでいる。試作を重ね、きねを持った「餅つきうさぎ」と「臥せうさぎ」の2種類を作る。柴野理事長、青野尚登さん(41)、高橋好子さん(65)の3人が毎日制作に励む。制作だけではなく、スゲの刈り取りや選別、干す、たたくといった一連の作業もすべて自分たちで行う。

スゲ細工の制作に当たる(左から)柴野理事長、高橋さん、青野さん

作業はウサギの胴体となる芯を作り、芯にモール状のスゲを巻きつけたり、耳となる部分を編んで取り付けたり、体や顔の毛をはさみで刈り整える。早くても完成まで2、3日を要する。目を付ける工程では位置が1、2mm変わるだけでも表情が変化し、「1体1体みんな表情が違う。同じものは二度と作ることができない」と柴野さん。今年は予約数にもよるが70〜80体ほどを販売予定だという。

毛を整える柴野理事長。手前はきねを持った「餅つきうさぎ」

柴野理事長は「頭や体の大きさなど、バランスを整えることが大切。ウサギの体のフォルムや毛の“モフモフ”した感じを出したかった」と話し、来年について「ウサギにちなみ、耳で正しい情報を集め、チャンスを捉えて飛躍してほしいですね」と話している。

「餅つきうさぎ」は1万8000円、「臥せうさぎ」は1体1万6000円。敷物のカラムシ織りは1枚2000円。地方発送も受け付けているが、送料や手数料は別途必要。

なお、妙高市上平丸の「スゲ細工創作館」は12月から冬期閉鎖しており、期間中の見学などは上越市板倉区の「スゲ細工資料館」で行っている。見学する際は連絡する。

問い合わせ、注文は柴野理事長090−3548−7370(午前9時〜午後8時)。