新潟県上越市下正善寺の正善寺工房で今から10年前の2012年、「10年後へのメッセージ」と銘打ったイベント企画があり、来場者が10年後の自身や家族らに向け、官製はがきに絵やメッセージを自由に記した。今月上旬、同工房で保管されていたはがきが宛名に書かれた住所に郵送された。
NPO法人「食の工房ネットワーク」の10周年記念プロジェクトとして行われた企画で、同年に計4回開かれたイベントの来場者が参加した。官製はがきには自身や家族、友人らに宛て、イラストをはじめ、10年後に向けたメッセージなどをつづり、同工房の蓋付きのかめで10年間保管されていた。
亡き父からはがき
上越市の女性(70)は夫との連名で県外に住む二女と当時1歳の孫、夫の弟らに宛て、はがきを書いた。夫は2019年11月、闘病の末、68歳で他界した。
盆の入りの8月13日、次女から「10年前のはがきが届いたよ」、夫の弟からも「兄貴からはがきが来た」とそれぞれ女性に電話があった。女性は「娘からの連絡ではがきを書いた事を思い出しました。受け取った娘たちはとても驚いていて。小学6年生になった孫はじじから届いたメッセージにとても喜んでいましたよ」と話す。
次女は今は亡き父からのはがきに「不思議な気持ち。お父さんらしくて、とてもとてもうれしいね」と話したという。10年前のはがきが届いたことで、懐かしい話に花を咲かせ、女性とその娘たち一家にとって今年の盆は特別なものになった。
女性は「お酒が好きないい人でした。はがきを書いたときは10年後、まさか自分がこの世からいなくなっているなんて思っていなかったはず。はがきを見て、楽しかったこと、いいこと、悪いこと、いろんなことを思い出ました。うれしくて涙が出ました」と語った。
同NPOの斉京貴子さんは「大切に保管していたはがきを無事に発送することができた。10年が経過し、いろいろなことが変わったと思う。はがきを受け取った人は驚いたと思うし、はがきを見ながら当時を思い出してもらえたら」と話していた。
今回は60枚ほどが投函された。当時の官製はがきは1枚50円だったが、郵便料金改定で現在は63円のため、郵送にかかる差額料金は同NPOが負担した。