映画「星くず兄弟の新たな伝説」が2018年5月19日から新潟県上越市の高田世界館で上映されるのに先立ち、4月7日に先行上映が行われた。手塚眞監督が舞台あいさつに立った。あいさつの最後に、ビッグニュースの披露もあった。
映画は、“漫画の神様”と称される手塚治虫の長男、手塚眞監督が23歳の1985年に手掛けた伝説的カルト映画「星くず兄弟の伝説」から33年の時を経て、リメイクでもなく、続編でもない新作としてパワーアップして蘇ったSFロック・ミュージカル。
近未来を舞台にスターダスト・ブラザーズというロッカー2人が月へ行ったり女性になったり西部劇をしたりと、冒険と活躍を繰り広げる奇想天外な物語。スターダスト・ブラザーズのカンとシンゴ役を三浦涼介と武田航平がそれぞれ演じ、井上順、夏木マリ、浅野忠信、内田裕也という大物俳優も出演している。
舞台あいさつに立った手塚監督は「当時の出演者や仲間が“30年経ったから何かやろう”という話になった。脚本でケラリーノ・サンドロヴィッチさんが参加し、具体的になった。自分が33年前の23歳の気持ちに戻って作った映画。東京ではリピーターが続出しているので、本上映が始まったら、また見てほしい」などと話した。
手塚監督は最後に、「手塚治虫原作の実写映画を6月から撮影することになった。来年には公開できる。父の実写映画を撮るのは初めて」とビッグニュースを発表した。
また、手塚監督は33年前の映画「星くず兄弟の伝説」をデジタル化しDVDにしようとするクラウドファウンディングの支援を募っている。「A-port」で1000円から支援できる。
◇公式サイト
http://stardustbros.com/
「星くず兄弟の新たな伝説」予告編動画
手塚眞監督からのメッセージ(町家交流館高田小町で)
手塚監督へのインタビュー
――会場の高田世界館を見学してどうだったか。
手塚 僕は映画館が大好きで、シネコンでない映画館だと、懐かしいというよりは「映画館に帰ってこれた」という気持ち。映画館は別にきれいでなくてもいい。作品が面白ければ。庶民的な、近所の人が気軽に集まれる場所でいい。
――この映画のテーマを聞くのは野暮だが、映画の中で監督に取材する人が出てきて、監督が東日本大震災による若者の閉塞感とか、夢をみようと答える場面があった。
手塚 半分冗談で、半分本気。若い人にもっと自由に伸び伸びとと生きてほしいと。本人は自由にしているはずだが、(最近の若者は)映画もあまり見ないし、音楽もあまり聞かない。何が好きなのと聞いても、何だろうと首かしげちゃう。自分の好きなものすら見つけられないという人が増えているような気がする。
――懐かしい感じがするのは、33年前の映画とダブってきているのか。
手塚 おそらく、今のデジタルになる前の娯楽映画のイメージが随所に入ってきている。分かりやすくいうと、後半に西部劇みたいになるが、あんな映画は今はないわけ。うそっぱちだが、あのおおらかさが逆に映画のおもしろさでもある。
――昔の映画はドラマの中では、いきなり主人公がギターを持って歌い始めたりした。
手塚 そういう感じです。
――色調もなぜか懐かしい。
手塚 特に後半の西部劇になってから、画質を変えている。微妙な演出だが、フィルムの粒子を映像にのせている。撮影はデジタルだが、わざと粒子を感じるようにして、色も退色しているようにいじっている。
――シンゴさんのバーは本当にあるという話だが。
手塚 最初に出てくるバーは、実際に彼がバーテンをやっている本人の店で、東京の下町で営業している。彼は本当のバーテン。それをそのまま使っている。
――歌がたくさん出てくるが、既成のものか、書き下ろしか。
手塚 全部が書き下ろし。33年前の映画は、近田春夫さんが先に音楽を作り、それを元にして映画を作ってくれと頼まれた。それに僕がストーリーを考えて乗せるという形。今回は逆に、ストーリーを考えてから、それに合わせていろんな方に音楽を作っていただいた。
テレビに出るような有名なアーティストはあまり参加していないが、バックグラウンドの人は近田春夫さんの時代から活動をしている人を集めてやっている。テーマ曲の「星くず兄弟の伝説」は近田さんが歌詞を書いて、赤城忠治さんが作曲している。
――内田裕也さんが出てきたときは驚いた。
手塚 内田さんのだけは本人が70年代から歌っている曲で、パンタさんの曲。本当は新しく作曲もしたかったし、録音し直したかったが、内田さんの時間が取れなくて。
――夏木マリさんの正体がわからなかった。
手塚 厚化粧していたんでね。あれは全部、本人がメイクをしている。自分で楽屋にこもって、自分が好きなメイクして、アクセサリーも全部自分で持ってきて。夏木さんは最近、東日本大震災の被災地が舞台になっている「生きる街」っていうシリアスな映画に主演している。映画館によっては両方かけているところがあるが、対極の演技をしている。「生きる街」ではシリアスでリアルな芝居、「星くず」でははじけた現実的ではない役だ。
――だから、あんなに生き生きしている。
手塚 こっちから、あんな顔やってくださいって頼めない。ベテランは事前に準備を怠りなくやるので、こちらは非常に楽。本当に役を作ってから来る。リハーサルしなくても、いきなり本番でちゃんとできる。
――途中で突然、台本が変わってしまうが、あれは元の作品でも同じか。
手塚 近田春夫さんが30年前に「続編はこんなんだよ」って自分で考えたアイデアがあった。それをそのまま、借りたわけ。続編は「星くず兄弟月へ行く」っていう話で、3本目は「星くず牧場の決闘」っていう話。3本作るの大変なんで、くっつけちゃったわけ。冗談だろうだけど、それを僕はずっと覚えていた。
近田さんは少し前から具合を悪くしていて、仕事をしていなかった。最初は「やります」と声がけしたが、せっかくなんで1、2曲お願いしようということで。最後にみんなでコーラスする曲は近田さんの曲で、井上順さんが最後に夏木マリさんと掛け合いする曲も近田さん作曲。試写会にお招きしたら誰よりも喜んで、「これはいい」って。それから元気になって、今はどんどん活動されるようになった。(おわり)