上杉謙信も吹いた? 里帰りした「一節笛」の音色をどうぞ

戦国武将、上杉謙信も吹いたと推測される尺八の原型「一節笛(ひとよぎれ)」の演奏会が2018年4月8日、謙信の墓がある上越市中門前の林泉寺で開かれた。国内外で活躍する尺八奏者、大由鬼山(だいよしきざん)さんが、幽玄な音色を本堂に響かせた。

一節笛を演奏する大由鬼山さん
演奏1

「一節笛」は長さ1尺3寸(約33cm)で、尺八は節が7つあるにのに対し1つだけ。穴は表に4つ、裏に1つで、指の押さえ方は尺八と同じだが、音の配列が異なる。戦国時代の武将が懐に入れて持ち運び、好んで吹いたという。

演奏会に使われた笛は、江戸時代中期に上杉本家の米沢藩から分家した米沢新田藩子爵家九代目当主、上杉孝久さん(東京在住)が所有している。上杉家に伝わる一節笛はこの1本だけで、謙信が奏でた記録があることから、謙信も使ったと推測される。

上越で初の里帰りとなる演奏会は、市民グループ「越後上杉藩」が主催。劣化して音が出なくなる前に謙信が育った林泉寺で音色を聞きたいという上杉さんの希望や、上越市民に謙信を肌で感じてほしいというグループの思いもあり開催にこぎつけた。

謙信が育った林泉寺に里帰りした一節笛
一節笛

この日は、都山流尺八大師範の大由さんが上杉さんから笛を受け取り、本堂に向けて捧げた後、約15分にわたって音色を響かせた。謙信の墓前でも演奏する予定だったが、風が強く中止になった。

大由さんは「竹が薄く細いので、音程を安定させるのが難しい。3か所ほど割れて修理した跡と虫食いが多少ある。国宝級の笛であり、謙信公が吹いた笛を演奏できることは光栄」と話していた。

上越市頸城区の男性(85)は「笛は思ったよりも小さく、高い音色だった。室町時代の笛だから、名人級しか吹けないのだろう」と話していた。