安定ヨウ素剤の配布やスクリーニング検査も 上越市が県原子力防災訓練に合わせ独自に体験会

新潟県上越市は2019年11月9日、県の原子力防災訓練に合わせ、柏崎刈羽原子力発電所からおおむね半径5~30km圏内に含まれる避難準備区域(UPZ)内の住民の、UPZ外への移動や付着した放射性物質を測定するスクリーニング体験を実施した。対象となった同市大潟区の2町内の住民28人が参加し、初めて安定ヨウ素剤の配布体験も行われた。

スクリーニング検査を体験する住民ら
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上越市内では柿崎区、吉川区全域と大島区、浦川原区、大潟区の一部が原発から半径30km圏内のUPZに含まれ、対象となる住民は合計1万4260人。県は今年策定した原子力災害広域避難計画に基づき8、9の両日に原子力防災訓練を実施。この訓練に合わせて、市が独自にUPZ内にある大潟区雁子浜と内雁子の住民を対象にヨウ素剤配布やスクリーニングの「体験会」を実施した。

避難準区域(UPZ)など(新潟県原子力災害広域避難計画から)
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体験会に参加した住民らは、屋内待避の後、それぞれの一時集合場所に集まってバスに乗り込み、実際の避難の際のスクリーニングポイントや避難所を経由し確認しながら、体験会場の頸城区のユートピアくびき希望館へ移動。

希望館では、衣服に付着した放射性物質を測定するスクリーニングや、放射性ヨウ素による内部被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤の緊急配布を体験した。スクリーニングでは東京電力新潟本部の社員5人が、放射性物質を感知した時の測定器のアラーム音の種類などを説明しながら、参加者に検査を実施した。

一人一人問診をして行われた安定ヨウ素剤の配布体験
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初めて行われた安定ヨウ素剤の配布体験では、市の保健師が一人一人に問診をし、安定ヨウ素剤に代わってあめを配布した。市によると、安定ヨウ素剤は上越保健所に全市民1回分とUPZ内の住民2回分相当数が配備されているという。

雁子浜町内会長の熊木勉さん(72)は「東日本大震災後、原発の30km圏内に住んでいることを非常に感じている。体験で少しは流れが分かったが、屋内待避など実際にはじっとしていられないのではと思う」と話していた。