「焼山の噴火は要警戒レベル」…妙高市の火山地質学者が警告

国の火山噴火予知連絡会長である東京大学名誉教授の藤井敏嗣氏が、このほどテレビ番組の中で、2014年9月に起きた御嶽山(岐阜・長野県境)の噴火などを例に挙げ、「(日本は)火山の活動期に入ったかもしれない」と注意を呼び掛けた。2014年は阿蘇山(熊本県)や口永良部島(鹿児島県)が噴火し、草津白根山(群馬県)、吾妻山(福島県)、十勝岳(北海道)で噴火警戒レベルが引き上げられるなど、活動期に入ったとみられる兆候が現れている。新潟県上越地方や北信濃にかけて唯一の活火山である焼山(2400m)が噴火する可能性はあるのだろうか。その場合、どんな被害が予想されるのだろうか。

このほど、焼山について半世紀にわたる研究成果をまとめた『新潟焼山火山-その素顔と生い立ち-』を自費出版した妙高市渋江町の火山地質学者、早津賢二氏(70)に聞いた。

焼山の1974年の水蒸気爆発(写真/州崎耕一郎、春日健)
昭和49年の噴火(州崎耕一郎、春日健撮影)S


同書によると、「(焼山は)この1000年間に4回のマグマ噴火があった」という。地質学的研究により、平安または鎌倉時代に2回、中世中頃(1361年)、江戸時代中頃(1773年)に各1回の計4回確認されている。それ以降の噴火は、マグマを噴出しない水蒸気爆発である。噴火の特徴は、マグマ噴火のときには必ず火砕流を噴出しており、過去には早川の谷を流れ下り日本海の近くまで達している。噴火に伴って、泥流や土石流が発生する例も多いという。

もっとも新しい安永2年(1773年)の噴火は、早川村旧家の記録などに残っている。この噴火は「焼山の山体と早川および真川流域を中心とする山麓一帯を、またもや徹底的に破壊しつくした」「火砕流の先端は、海岸から4-5km地点まで達したと思われる」と述べている。

その噴火からすでに241年もマグマ噴火を起こしていないことから、早津氏は「いつ噴火が起こってもおかしくない」「焼山のマグマ噴火は要警戒レベル」と述べる。

最終章では、噴火の予知や防災などについて述べている。北海道の有珠山は2000年の噴火の際、気象庁が緊急火山情報を出し、1万人余りが事前に非難することができた。焼山の噴火も予知できるのだろうか。早津氏は「有珠山は噴火を繰り返す周期が短く、噴火の特徴が良く分かっている。その上で最新機器を備え、24時間観測をしていた。予知されるべくして予知された」と述べる。

焼山は「観測機器を設置してからまだ10年ほどであり、まだ1回も噴火していない。噴火の兆候やくせ(規則性)も分かっていない」と慎重に構えるが、「マグマが噴出するような大きな噴火では、(観測機器が)何らかの異常を察知してくれるのではないか」と期待している。

その上で、総合的な防災計画の策定、災害教育の導入などを訴えており、早津さんは「啓蒙書として書いた。地元の人に読んでもらい、防災に役立ててほしい」と話している。

B6判、133ページ。頒価1500円。上越市、妙高市、糸魚川市の主な書店で販売している。郵送希望の場合は(hayatsu7@rose.ocn.ne.jp)へ問い合わせる。

著者の早津さん
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