上越市自治基本条例は憲法違反?

憲法改正論議が政治の焦点となる中、衆議院の憲法審査会でこのほど、新潟県上越市の自治基本条例が憲法の規定を逸脱しているのではないかという指摘があった。

衆議院の憲法審査会は憲法の章ごとに議論を進めており、2013年5月16日に10章まで到達した。上越市の条例が話題の上ったのはこの日で、憲法の10章にある「最高法規性」をうたった98条に関してだった。指摘したのは新潟6区選出の高鳥修一氏(自民)。

98条は憲法が国法秩序の中で最高法規であり、憲法に反する法律、命令などは無効となることを宣言している。また憲法94条は「地方公共団体は、法律の範囲内で条例を制定することが出来る」とうたっている。一方、上越市の自治基本条例には、条例の「最高規範性」を定める規定があり、法令の解釈・運用に当たっても条例の尊重や整合性を求める規定がある。この点が憲法と矛盾しているのではないかという指摘だ。

上越市自治基本条例第42条 この条例は、市における自治についての最高規範であり、市民、市議会及び市長等は、この条例を遵守しなければならない。
2 市議会及び市長等は、他の条例、規則等の制定、改正及び廃止並びに法令の解釈及び運用に当たっては、この条例の趣旨を尊重し、この条例との整合を図らなければならない。

 高鳥氏は「憲法以外に市が定めた条例に『最高規範性』という文言が入っているのに不思議な感じを受ける。(中略)国会が制定する法規範の解釈及び運用にあたり、市が定めた『条例の趣旨を尊重し、この条例との整合を図らなければならない』とは順番が逆ではないか。これは厳密に言えば、憲法の定める条例制定権を逸脱した規定ではないかと思うが、この点について衆議院法制局の見解を求めたい」と質問した。

この点について衆議院法制局はあくまで一般論とした上で、最高規範については「条例の定める最高規範性は他の条例との関係に過ぎずあくまで訓示的、宣言的な意味にとどまるのではないか」と答弁。条例が法令解釈に当たって条例との整合を求めている点については「法令の主旨、目的に反しない範囲内で、法令が解釈を許容している範囲内に限ってという留意事項を定めたものと解するべき」との見解を示した。

2013年5月13日の衆議院憲法審査会(画像をクリックすると衆議院TVから録画を見ることができます)
kenpou

http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=42759&media_type=wb
 上越市の自治基本条例は2008年4月に施行されたもので、自治の基本理念や、自治の担い手の権利・権限や責務、市政運営の仕組みなどを定めた「自治体の憲法」ともいえる条例。制定当時につくられた同市による逐条解説(リンク)にも法令解釈について「許容される範囲内で、法令の積極的な解釈と運用を行わなければならないことを定めたものである」と同様の見解が説明されている。