「サザエさん展」に上越からの集団就職が登場

新潟市中央区の新潟市美術館で2013年4月下旬から開かれている「サザエさん展 長谷川町子とその時代」で、日本の高度成長期に上越地方から集団就職したとみられる若者を迎え入れる東京の商店街の様子を描いた「サザエさん」の原画が展示されている。会期は7月15日まで。

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同美術館の藤井素彦学芸員によると、人手不足に悩んだ東京都世田谷区の桜新町商店街が1954年(昭和29年)、上越地方から15人の採用を受け入れたのが集団就職の始まりだという。「作者の長谷川町子は1946年以降、ずっとこの町に住んでおり、集団就職は作者にとってご近所の話題でもあった」と話す。集団就職は農家の二男以降の子が多く、「金の卵」ともてはやされ、学校でも企業の求人を積極的に斡旋した。

上越地方からの集団就職が描かれているサザエさんの原画(左) ©長谷川町子美術館
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サザエさん展の会場の様子 ©長谷川町子美術館
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1956年(昭和31年)3月29日付の朝日新聞に掲載された原画は、上野駅に着いた中学校卒業生にラジオ局がインタビューしている場面から始まる。「どこにおつとめするの」と聞くと「じてん車やです」という。自転車店の主人にもマイクが向けられ、「温かく家族どうようにしたい」と答えるうちに話が大きくなり、「できれば世界一周をさせてやりたい」と答えてまい、奥さんにたしなめられるという話。家に住み込ませ家族同様に温かく迎えた様子が伺える漫画で、まるで1958年(昭和33年)ごろの東京の下町を舞台にした映画「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005年公開)のようだ。サザエさんをはじめ、磯野家の面々が出てこないが、当時はそういう作品もあったという。

「サザエさん」が誕生したのは1946年(昭和21年)のこと。それから1974年(昭和49年)まで、6477話もの連載が続いた。展覧会では、長谷川町子美術館(世田谷区桜新町)の全面的な協力で、作者の長谷川町子(1920-1992)の知られざる初期作品から『サザエさん』『いじわるばあさん』まで、原画や愛蔵品など多数の作品と資料を通じ、生涯と仕事をたどる。単行本『サザエさん』全68巻のカバー原画全点の公開など、見どころがいっぱいだ。

時間は午前9時30分~午後6時。一般900円、大学生・高校生700円、中学生以下無料。月曜休館。問い合わせは同館、025-223-1622。