日本海上に山並み 不思議な写真の謎に迫る

2013年5月11日、上越タウンジャーナルに不思議な写真が送られてきた。写真手前には建設中の北陸新幹線の上越駅(仮称)、奥には直江津港、その向こうの日本海に大きな山並みが写っている不思議な写真だ。写真が撮影されたのは柿崎沖に蜃気楼が現れた5月9日。山並みは佐渡にしては大きすぎる感じがする。不思議な写真の正体を追った

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写真1

撮影したのは妙高市に住む、自営業の田中恒さん(61)。妙高市役所からほど近い矢代川にかかる「はねうま大橋」から5月9日午前5時ごろ撮影したという。いつも犬の散歩がてらカメラを持ってこの場所を歩いているという田中さんは「佐渡がこんなに大きく見えるものだろうか」と首をかしげる。

写真は3枚あり、1枚目を良く見ると直江津港の風力発電1号機が写っている。まずはこれを手掛かりに、大きな山並みが佐渡なのか、蜃気楼なのか考える。
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写真11

地図上で撮影ポイント、上越駅(仮称)、風力発電1号機を結んだ直線上には確かに佐渡島がある(下の地図参照)。


より大きな地図で はねうま大橋から撮影 を表示

次に佐渡の山々の見かけの大きさがどのくらいに見えるかを考える。

風力発電1号機の高さは約50mで、撮影場所からの距離は17.6km。佐渡の山の中で一番高い金北山が直線上にあり、その標高は1172mで、撮影場所からの距離は約120km。山並みが大きいのでこの金北山周辺の山並みが見えていると仮定して、計算してみる。

 物体の見かけの長さは、見る人(自分の目)とその物体との距離に反比例する。

上の原理にしたがって計算すると、金北山は風力発電1号機の約3.5倍の高さに見えることになり、2倍程度に見える写真1とは少し違う。ただ金北山は北側の大佐渡にあり、南側の小佐渡にも400m程度の山がいくつもある。撮影ポイントから100kmほどの小佐渡にある標高400m程度の山が見えていると仮定して計算すると、その山々の見た目の高さは風力発電1号機の1.5倍ほどという結果になる。

写真1では山並みは風力発電1号機の2倍程度の高さ。計算結果の1.5~3.5倍の範囲内だ。

 次にほかの2枚の写真を見てみる。
写真2(クリックで拡大)
写真2

写真3(クリックで拡大)
写真3

画面に写っていいる島影の長さと、陸側に写っている範囲の長さ、上越方向から見えるであろう島の長さの関係を、さきほど同様に計算するとやはり佐渡の可能性が高い結果になる。

ただ、佐渡だとしても、妙高市の中心部から、新幹線の新駅、直江津港、佐渡までもが一枚の写真に収められる場所があるとは驚きだ。撮影した田中さんも「意外なところから意外なものが見えるんですね。本当に驚きです」と話していた。


*注
「物体の見かけの長さ(今回の場合は高さ)は、見る人(自分の目)とその物体との距離に反比例する」という原理にしたがって、次のような式によって計算しました。
見かけの長さ×自分と物体との距離=一定
地球の丸さは無視しており、妙高市、上越市の海抜0mで計算しました。