市民グループ「みんなで決める会」が直接請求した東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票条例案などが新潟県議会臨時会で否決された翌日の2013年1月24日、新聞各紙は朝刊で条例案否決について社説や解説を掲載した。新潟日報と朝日新聞が県民投票実施に一定の理解を示した一方、読売新聞は県議会の条例案否決を「良識ある判断」と評価した。また毎日新聞は議論の深まらなった点などを課題として指摘した。この問題に対する新聞各社スタンスが見て取れる。
新潟日報は「条例案は重い一石を投じた」と題した社説を掲載。県議会最大会派の自民が国策である原子力行政は県民投票になじまないと反対したことについて、「その国策に翻弄された福島で、過酷な原発事故が起きた。同じ東電の原発が本県に立地することを受けた議論は十分だったのだろうか」と疑問を呈し、「再稼働の判断材料に『県民の民意を取り入れてほしい』という市民団体の訴えは説得力があろう」と述べている。国策についてさらに「『国が責任を持って決めること』。こうした主張が根幹にあるなら、県議会の役割はどこにあるのか。よく考えてほしい」とも。「市民団体の問題提起をかみしめ、議会は住民の声をすくい上げるたのめの知恵を絞る必要がある。民意を直接示す道を閉ざすべきではない」と締めくくっている。
朝日新聞は新潟県版に「民意考慮 再び議論」と題した解説を掲載。「昨年10月の朝日新聞の県民世論調査では72%が県民投票に賛成した」と議会での結論と世論のギャップを示した。「国策だがら県民投票になじまい」という議会での結論について「本当にそうなのだろうか。柏崎刈羽原発で大きな事故が起きれば、被害を受けるのは県民だ。そうしたリスクは、将来にわたって県民の暮らしに影響を及ぼすことになる。県民には意見を言う権利があるはずだ」とした。知事に自ら投票実現に向けた県議会との議論を求めた上で「知事も県議会も、多くの県民の思いに向き合い続けるべきた」と締めくくっている。
読売新聞は新潟県版に「国の根幹政策 政府が責任を」と題した解説を掲載。県議会による条例案否決について「良識ある判断で評価できる」と表明。その理由については「一地方の住民に国の根幹に関わるエネルギー政策の判断を委ねるには問題が多いからだ」と述べている。否決という結果を評価した上で「原発立地県の県民として再稼働を巡る泉田知事の考えや県議会の議論は今後も監視していく必要がある」とした。さらに「知事は今回の臨時会でも『福島第一原発事故の検証が先』と再稼働に関する方向性や将来的なエネルギー政策を語ることはなかった。県民が理解を深めるためにも、知事や県議会には今まで以上に自らの考えを明確に示す姿勢が必要だ」と締めくくっている
毎日新聞は新潟県版に「深まらなかった議論」と題した解説を掲載。知事と県議の議論のすれ違いや、修正案の提出のタイミングの遅さによる議論の不十分さなどを指摘。「意見書では賛否を明確にしなかった知事だが、日を経るごとに賛成姿勢を強めていたようにも見えた。議会では目に見える議論が尽くされなかった現状をどう捉えるのか。(中略)約6万8000人の署名の重みを泉田知事がどう判断するのか注目される」と述べている。