上越市の児童虐待過去最多 貧困や障害背景に

新潟県上越市内で昨年度1年間に親などから虐待された児童は293人。2年連続で過去最多を更新している。増え続ける児童虐待の背景には、貧困や障害など厳しい家庭の現状がある。市がこのほど初めて行った分析で、虐待家庭の43%が生活保護や市民税非課税などの低所得層で、虐待した母親の45%に知的障害や精神障害があることなどが分かった。

児童虐待については、全国どの自治体も国の様式に従って、件数や人数、年齢、虐待の内容などを統計的に取りまとめている。同市ではさらに踏み込んだ背景を探ろうと、2010年4月から今年9月末までの2年半の間に、新たに虐待された児童239人、136世帯について、経済状況や親と児童の障害の有無などを調べた。

虐待のあった家庭の家族構成は、ひとり親家庭が27%、内縁・同棲が10%、再婚が18%。経済状況は、市民税非課税世帯が23%、生活保護が8%、派遣や自給自足に近い生活の「収入不安定」が12%と、合計43%の家庭が経済的に困窮している。

虐待者は母親が60%と最も多く、次いで父親が31%。虐待した母親のうち、25%が精神障害、20%が知的障害。またこのほか、子供を放置して長い間男友達の家に入りびたったりするといった「性格的問題」を抱えている母親が20%を占めた。虐待した父親のうち、16%が精神障害で、知的障害と身体障害はいずれも3%。性格的問題は24%を占めた。

また、虐待を受けた児童の55%が未就学児で、小学生は32%。虐待された児童の44%が、知的発達の遅れや発達障害などの問題を抱えていた。

虐待の内容は、食事を与えなかったり、衣服を何日も着替えさせないなどのネグレクト(育児放棄)が最も多く44%を占め、次いで身体的虐待が31%。全国的には身体的虐待が最も多いが、同市では市や児童相談所や、警察、保育園など関係機関が連携してさまざなな取り組みを行ってきたことで、目に見える身体的虐待の早期発見が進んでいると見られる。

この分析は、11月8日に市役所で開かれた要保護児童対策地域協議会代表者会議で示された。同協議会は市教委や学校、保育園、警察、児童相談所、PTA、子ども会などの関代表で作る組織。会合では「今の子供たちを取り巻く一番大きな問題は親だ」「親に子供への接し方などを教える機会が必要」「虐待は家庭の問題に帰結するが、背景には貧困などさまざまな問題があり、果たして親だけの責任としていいのだろうか」「現代の家庭では次の世代を育てることが難しくなっている」などさまざまな意見が出ていた。