「シグナル」の監督や三根さんらがトークショー

上越ロケの映画「シグナル~月曜日のルカ」の上映が始まった新潟県上越市の映画館「高田世界館」で2012年8月11日、谷口正晃監督や主演女優の三根梓さん、撮影や美術などのスタッフによる舞台あいさつとトークショーが行われた。映画の舞台となった高田世界館のスクリーンの中で繰り広げられるドラマに、三根さんは「ここで撮った映画をここで見るという貴重な体験ができた」と目を輝かせていた。

高田世界館で行われた監督、スタッフ、主演女優らによるトークショー
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谷口監督の舞台あいさつ
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中央左が谷口監督、中央右が三根さん
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トークショーの内容は以下のとおり。

司会(上越映画鑑賞会荒井治喜事務局長) 映画を撮影した去年は世界館の100周年の節目の年。シグナルと世界館との出会いをお聞きしたい。

谷口監督 趣のある、映画愛そのものを表してくれる映画館がどうしても必要だったので、インターネットとか本を見る中で、いくつか候補があったんですけども、一番いいと思ったのが世界館。最初にロケハンで三浦さんや上野さんと来てみたら、多分これ以上の所はないかもしれないな、と見た瞬間思いましたね。映写室が狭いんで、当初はセットを組めないのかという話も出ていたんですけれど、三浦さんは「このクオリティーは出せないから」と。

三浦伸一(美術) 映写室を出てきて、この劇場の空間が、セットで切り離しては統一感がといれないことと、圧倒的な存在感がこの映画館にある。表が駐車場であり、道まで距離があったりしましたが、逆に最後にいい効果を出した。美術的にはなにも引かずに、銀映館の看板を付けただけのこと。

上野彰吾(撮影) われわれ映画を製作している者にとって、映画館というのは学校と同じような所で、とても大事であり、こういう空間から育ってきた状況。その空間を見た時に、われわれは尊敬をもって映画館を丸ごと活かすことができるだろうかという難点が出てくるだろうなと思っていました。ちょっと残念なのですけども、ルカはフィルムの映写技師なんですね。この映画館には2台の古い映写機が存在していまして、これがメンテンナンスされ、生きていました。映画館があっても本当に上映ができる映画館というのは本当に少ないんです。ご存知のように今はデジタルの波が押し寄せています。我々映画屋としましてはフィルムで撮りたかったんですが、ここ1、2年はものすごいデジタルの進歩があって、フィルムの画質を凌駕するぐらいまできたわけです。それでデジタルカメラで撮影することになった。今日はデジタル上映で、ほぼ完璧な満足な上映でした。狭い映写室って当たり前なんです。2台の映写機が動いていれば済むわけですから。狭い中でどうやって芝居を撮るかっていうのはいろんな難問がありましたけども、ひとつひとつ超えることによって、ルカの気持ちを撮ることができたんじゃないかなと思っています。

谷口監督 フィルムのプリントがなくて、映写機でシグナルをかけられなかったことが本当に申し訳ない。映写技師の久保田さんが、お見えになっていますが、神聖な場所を快く貸していただいたことは本当に感謝しています。

司会 久保田さん、お見えですかね。久保田さんはルカの映写指導の大役を担っていただきました。エキストラでもばっちりでした。

久保田定(高田世界館映写技師) 8月6日から31日まで、そのうち1週間ぐらい上田に行かれましたけど、あとはほとんどこちらで撮影しました。私は映写技師として、丸一日、梓さんに教えることになりました。映画を見れば分かるように、技師長らしくやっていましたんで、大したもんだと。去年は19歳でした。若いから物分かりが良くて、頭もいいんじゃないかと思います。そう簡単に普通はできません。

<主演女優の三根梓さん登場>

三根 撮影していたのが1年前。あらためて今見て、変わっていないなと思います。歴史のあるものは1年じゃ変わらない。あらためて歴史の重さを感じ、この地に来れたことをうれしく思っています。

司会 良かったシーンはありますか。

三根 たくさんあるけど、一番印象に残っているのは、レイジとルカと恵介が3人で対決するシーン。すごく緊迫していて、現場が一日ぴりぴりと張り詰めていました。一日中テンションを保ち続けるのは大変だったけど、夜中の1時か2時まで撮影し、撮り終えたときに達成感を感じました。

谷口監督 ここでの上映は一生忘れられない。スクリーンの向こう側とこっち側が一緒になるのは、不思議な感じだった。この日がないとシグナルは終われない。

司会 西島君はどうでしたか。

上野(撮影) 西島君は可愛かった。笑顔が良かった。

三根 西島さんとは一緒にいる時間が一番長かったので、緊張しているときに変顔して笑わせてくれたり、ステージで踊ったり、私は何度も助けられました。クールで口数が少ないイメージがありましたが、すごく温かくて「このシーンは難しいんですけれど」と相談したら、自分の気持ちでぶつかって大丈夫だよと、温かい言葉をかけてもらいました。

司会 初めての主演でしたが。

三根 初めてのことばかりで、不安やプレッシャーがありましたが、スタッフや共演者が温かく見守ってくださいました。くやしい思いもたくさんありましたが、皆さんの支えもあって、ルカを演じ切ることができました。この作品は一生の宝ものになると思っています。

司会 監督の演技指導で、今だから言えることはありますか。

三根 分からないことがあって聞くとていねいに教えてくれる監督ですが、私が勉強不足で、トーンが違うとか、体が固まっているとか、注意を受けて裏で毎日泣いていました。泣いて目が腫れて迷惑をかけたり、厳しいことを言われるときもありましたが、たまにほめてくださるときもあって、アメとムチで鍛えていただきました。

司会 上越の撮影で印象に残ったことは。

三根 地元のお母さん方が毎日お昼と夜にご飯を届けてくださいました。おにぎりやカレーがおいしくて、温かいご飯を毎日食べることができて、力になりました。

司会 これからの抱負を一言。

三根 演技の勉強を続け、演技の幅がある女優、たくさんの方から愛していただける女優になりたいです。